第26話 妹も胸が絶壁のように小さくてな
閑話休題。
月が下着を脱げない理由、それは隣にあった。
立ち振る舞いは漢だが、その体はまさに女だった。
全女性が羨ましがりそうなモデル体型。
胸は大きく膨らんでおり、ブラをしていなくても張りがあり谷間がある。
推定Hカップはあるだろう。
それなのにウエストは細く、お尻は大きい。
桜色の乳首に桜色の乳輪はまさに女の理想の胸そのもの。
女性にしては肩幅がガッチリしているが、その胸の前にそんなことは些細なことでしかない。
メアリーは自分に自信があるのか、一切自分の体を隠そうとせず堂々と立っている。
それに比べて月の体は貧相である。
そこまでメリハリのない体。
Bカップという日本女性の平均にも達していない。
くびれはあるが、あまりヒップが大きくないのであまりメリハリがない。
乳首や乳輪は綺麗なピンク色をしているが、それぐらいしかメアリーと同等なものはない。
「だってメアリ―さんが凄いんですもの」
「なにが凄いのか分からないが、脱がないとお風呂に入れないだろ。それとも我が脱がせてやろうか」
「わ、分かりました。脱ぎますから~」
メアリーの裸を見て自信を無くす月。
メアリーは早くお風呂に入りたいのか無理矢理月の下着を脱がしにこようとするがさすがにそれは同性でも恥ずかしい。
月は脱がされたくなかったので、すぐに自分でブラジャーとショーツを脱いだ。
大人っぽいメアリーの裸体と子供っぽい月の裸体。
「……これが格差社会か」
「?」
月は思わず女社会の格差を嘆く。
いつかメアリー側に行きたいが、高二でこの体なので成長は絶望的だろう。
お風呂場に入ると、運が良いことにお客さんは誰もいなかった。
とりあえず最初に体を頭を洗い終えてから、適当のお風呂に入る。
セミロングの月は軽く頭を結ぶだけで終わるが、ロングヘアーのメアリーは髪型をお団子状態にしてお風呂に入る。
結構メアリーの髪は長いため、頭が重そうだ。
「メアリーさんって頭、重くないですか?」
「別に全然重くないぞ」
メアリーほどまで髪を長くした経験がなかった月は頭の重さが気になったためメアリーに質問をする。
メアリ―は別になにも感じていないらしく、余裕そうな表情を浮かべていた。
もし、月だったら肩が凝りそうだ。
それに重そうなのは頭だけではない。
「? どうしたんだ月。そんなに我の胸ばかり見つめて」
「あっ……ごめんなさい。私、胸小さいから胸って本当にお湯の上に浮くんだな~と思って」
自分の胸元の視線に気づいたメアリーは不思議そうに月に話しかける。
月は自分がデリカシーのないことをしていたことに気づき、謝罪する。
いくら同性でも胸をジロジロ見られるのは良い気持ちにはならないだろう。
「確かにそうだな。だからお風呂に入ると浮くから楽になる」
大きい胸のせいで肩が凝っているからか、メアリーは気持ちよさそうに伸びをする。
男子じゃなくても大きい胸を見ると、どうしても視線がそっちに向かってしまう。
同じ女として負けたような気がして。
「やっぱり胸が大きいと気になるものなのか」
「……少しは気になりますね」
「そういうものなのか。我には分からんが妹もずいぶん気にしているようでな。個人的には胸が小さい方が色々と楽なのだがそれを言うと凄く怒られるのだ」
「そうですよ。妹さんの言うとおりそんなこと言っちゃいけません。胸の小さい女の子はみんな胸の大きさを気にしてますから」
メアリーの質問に月はどう答えようか少し逡巡したが素直に答える。
胸の大きいメアリーには分からないかもしれないが、胸が小さい女の子は誰だって胸の大きさを気にしているし、胸の大きい女の子のことを羨む。
胸の大きいメアリーは小さい方が良いと思っているがそれは貧乳女子には禁句である。
基本自分の意見を言うことが苦手な月ですら、それだけはしっかりと主張する。
「……そうなのか」
「そうです」
メアリーですら圧倒されるぐらい、月の言葉には熱が込められていた。
「というかメアリーさんって妹さんがいるんですか」
「そうだな。もう何百年も会っていないがな。妹も胸が絶壁のように小さくてな、よく我の胸が羨ましいと言っていた。我は逆に妹の胸の方が戦いやすくて羨ましかったが」
メアリーに初めて妹がいるということを聞いた月は驚きのあまり、聞き返す。
メアリーとその妹は何百年も会っていないらしいが、それはなんかの比喩だろう。
そもそもメアリーだってまだ十七年しか生きていないのだから、何百年は盛りすぎである。
メアリーの妹がそのくらい胸が小さいのか分からないが、胸が小さい者としてメアリーの巨乳は羨ましく思うのは当然である。
「月は女なのが嫌なのか」
「……別に嫌ではありません」
「それじゃー男になりたいのか」
「別に男にないたいというわけではありません……ってメアリーさんってずいぶんぶっこんだ質問してきましたね。逆に驚きです」
「?」
月自身、女が嫌だとか男になりたいという願望はない。
ただ、自分が静香たちの異性である限り、どこか一線を感じる。
それがなんだか寂しいのだ。
温泉に入ってリラックスして鈍感になっていたが、メアリーの質問はどれも無遠慮だった。
さすがの月もこれにはツッコまざるを得ない。
メアリーは思ったことを言っているだけらしく、なぜ月が驚いているのか分からないようだった。
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