吸血鬼の三百年恋

黒姫百合

プロローグ また恋の続きを始めよう

第1話 現在

 高校に入学して一年も経つと、高校のリズムにも慣れてくる。

「やっぱり春は新入生とか新社会人が多いな~」

 高校二年生になり、去年とは違い心にも余裕がある石川静香は初々しい新入生や新社会人を見ながら懐かしそうに呟く。

 今年新入生、もしくは新社会人の人は真新しい制服やスーツに身を包み緊張した面持ちで歩道を歩いている。

 去年は静香も高校一年生ということもあり、高校での新生活に期待もあったが不安の方が多かった。

 しかし箱を開けてみたらそれは杞憂で、気の合う友達もできたし、平凡だが毎日が楽しい。

 石川静香は高校二年生の男の娘である。

 男の娘と言っても創作で出てくる男の娘と同じようで違う生き物である。

 この世界には男子である男の娘と女子である女の子の二種類しかいない。

 だから、顔だけで見ると男の娘なのか女の子なのか分からない。

 男の娘の特徴は胸がないことと、男性器がついており、女性は胸が発達し女性器が付いている。

 だから体つきは男の娘の方がゴツゴツしており、女の子の方が丸みを帯びているが、パッと見はあまり大差はない。

 閑話休題。

 身長百五十後半と男の娘にしては少し小さい。

 黒髪のロングヘアーで、手櫛をしても全く髪の毛が手に絡まないほどサラサラしていて、枝毛一本ない。

 表情は全体的に柔和だが、友達には特徴のない顔だと言われてしまう。

 静香のことを見ていると、守ってあげたくなるほど庇護欲を掻き立てられるらしい。

 制服は男の娘は白のブレザーに黒のスラックスにネクタイ、女の子はセーラー服に紺のスカートに赤いネクタイである。

 空は清々しいほど晴れていて爽やかで、まるで新入生や新社会人を祝福しているかのようだった。

 そんないつもと同じ通学路を歩いていると、ひときわ目立つ女性が前から歩いて来た。

 身長百八十センチ前半はあるだろう。

 それぐらい長身で、ガタイもよく目立つ女性だった。

 それに加え服装も派手で赤いドレスに黒のオペラグローブを付け、赤いヒールを履いている。

 胸もドレスからはみ出るほど大きく、推定Hカップはあるだろう。

 西洋の血が入っているのか鮮やかな金髪をしている。

 髪質はストレートでよく手入れをされているのかサラサラしており、腰近くまで長い。

 目はまるで燃え盛るような真紅の色をしており、吸い込まれそうなぐらい引き付けられる。

 それと同時に目が吊り上がっているせいで、少しきつい印象も抱く。

 唇に真っ赤な口紅をしており、まるで中世のお嬢様のような女性だった。

 その圧倒的な美しさに静香はその女性に目を奪われてしまった。

 その瞬間、心の中でなにかの引っ掛かりを覚える。

 前から歩いて来た女性も静香の存在に気づく。

 女性は静香を見ると、ものすごく嬉しそうな表情を浮かべ静香の元へ歩み寄る。

 女性はあまりにも嬉しすぎて涙をこらえているように見えた。

「ようやく会うことができた。君を迎えにきたよ静江。また恋の続きを始めよう」

「えっ……」

 突然の女性からの告白に、静香はわけが分からず呆然とする。

 これは三百年以上前に約束した吸血鬼と人間の恋の物語。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る