第1話
キィンキィンキィンという鋭い金属音が夜も更けてきた街中に響く。街を駆け抜ける黒い影を追いかけながら俺はあの6文字を思い出す。
俺がその騎士のことを知ったのは8つの頃だった。いや正確にはもっと幼い時だが。親が歴史研究者だったのでよく
そんなことを思い出しながら駆けていると影が突然跳んだ。ヤバいな…今は夜、距離を取られ過ぎると見失ってしまう。慌て速度を上げて追う。俺の刀の切っ先が背を捉える。行ける!と思ったのだが刃が入らない。なぜだ?と思いながら動きを止めた黒い影改め魔物を見る。その瞬間俺は戦慄した。この魔物、普段俺が対処する等級より上の等級の魔物だったのだ。落ち着け俺… 今俺が引けば周りに被害がでる。「俺、一応新人騎士なんだけど」とぼやき、ゆっくりと息をはいて魔物をを見据える。魔物はぼやきを聞いてかニヤッと笑った。再び金属音。打ち合わされた刃から火花が飛び散る。見たところ俺が普段担当する等級の一つほど上に当たるのだろう。二合、三合と切り結び俺の方から大きく後ろに飛び、距離を取る。このままでは決着がつかない。魔物の方にもそういう思いがあるのかお互いにじりじりと距離を詰める… 魔物の剣先が揺れた瞬間、俺は地面を蹴り飛ばして駆け抜けた。俺と魔物の刀がぶつかる直前に俺は手首を捻り刀を巻き上げる。初めて魔物の顔に驚きと焦りの色が浮かぶが構わず一気に切り伏せる。ザシュッっという音と共に魔物の身体が傾いていき地面に横たわる。勝てた、なんとか勝てた。霧状に霧散していく魔物を見ながらふぅと息を吐き帰路についた。幸いにも建物や民に被害はなく俺も傷はほとんどおっていない。しばらく歩くと少し大きめの建物が見えてきた。正門には[星龍騎士団本庁]の文字。そう、俺の所属する騎士団の本部だ。
夜半の静けさを背に門をくぐり敷地内に入っていく。館内に入って入り口で警護をしている騎士に軽く挨拶をして騎士長室に向かう。えっと、騎士長室は…。三階だな。簡素な廊下を歩き騎士長室に向かう。'コンコン' と扉を叩くと「はーい、どぞー」と少し高めの綺麗な声聞こえてきた。「失礼します。一等士星川、報告に参りました」と言いながら室中に入る。
「お疲れ様、星川くん」
と俺に声をかけてきたのは副騎士長だった。室内にいるのは副騎士長だけで騎士長の姿が見当たらない。「お疲れ様です副長。あれ?騎士長はどちらへ?」
「天子様に呼ばれて今は留守よ」
「そうですか、では副騎士長殿にご報告致します。本日夜半前………」
騎士長が遅いの絶対飯食いに行ってるからだろと思いながら俺は今日の出来事を報告した。
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