SS:タマと悪者退治
「夜のお散歩~?」
お出かけするご主人様を見つけたので、緊急タイホなの。
だって、アリサとミーアに頼まれてるから。
「ああ、見つかっちゃったか。皆には内緒だよ?」
「あい」
ご主人様に
ミーアやアリサは「ご主人様が一人で出かけようとしたら捕まえて」って言ってた。
でも、今はタマと一緒だから、大丈夫。
――大丈夫だよね?
隣のお屋敷の天辺から、ぴょ~んと飛んで出発!
ご主人様の黒いマントが風に揺れて楽しそう。白い仮面も笑ってる。
タマは上手く飛べないから、ご主人様にだっこしてもらう。
「どこまで~?」
「もうすぐ――ほら、あそこだよ」
ストンと尖塔の天辺に着地。
マントは風に揺れてるのに、ご主人様はぴくりとも揺れない。
――さすが、なの。
「ほら、あの悪者を退治するんだよ」
「悪者~?」
ご主人様の指差す方を見ると、黒ずくめ達が武器を持って路地裏に潜んでる。
「ウチの従業員の実家を襲ったらしいんだ――って、そんな話は後だ」
ご主人様がタマを顔の前に持ってくる。
見つめられると、恥ずかしい、にゃん。
「いいかい、あいつらは迷宮の魔物より遥かに弱いから、手加減を忘れずにね」
「あいっ!」
シュタッのポーズでお返事。
「さあ、忍者の時間を始めよう」
ご主人様の言葉に、コクリと頷く。
だって、ニンジャは喋らないから。
ご主人様がタマを抱えたまま黒ずくめ達の正面に着地する。
「なんだ、キサマらは!」
「お前達の敵さ」
着地と同時にタマは影に潜む。
「なんだ? ピンクの塊が消えたぞ?」
「それより、こっちの怪しい仮面を殺せ!」
「「「応!」」」
黒ずくめ達が、一斉にご主人様に襲い掛かる。
タマは助けに行かない。
だって、必要ないから。
――しゅごい!
ご主人様が6人に増えて、6方向から襲ってくる黒ずくめ達を攻撃してる!
みんな剣を振り下ろすヒマもなく、打ち倒されて地面に転がった。
タマも覚えなきゃ!
だって、ニンジャだから。
◇
見とれてばかりじゃ、叱られちゃう。タマも仕事をしなきゃ――。
「向こうが騒がしいな」
「衛兵に見つかったのかもな」
「オレ達だけでも、さっさと奪って、殺して、逃げようぜ」
「だな」
悪者発見。
しゅりけん、しゅっ、しゅっ、しゅ~?
――あれ?
「ふん、なかなかやるようだが、元赤鉄の俺様には通じないぜ?」
手加減しすぎちゃった。
オジサンが大斧で襲い掛かってきた。
居合い一閃なの。
ニンジャトーをしゅぱんと抜いてシュシュッと振ると、斧なんて真っ二つ。
「うぉ、なんだ? 赤い刃が飛んできた?」
うにゅ、魔刃砲が出ちゃった。
――あっ、ご主人様が向こうで魔刃砲をキャッチしてくれてる。
タマは手を振ってご主人様にありがと、ってする。
あれ? でも、さっきまで向こうで戦ってたのに?
振り向くと、そっちでもご主人様が戦っていた。
残像! アリサが魔王ごっこでよくやってる「それは残像だ!」にゃん!
さすがはタマのご主人様。
「魔法の武器か。この卑怯者め!」
オジサンがぷんぷんって怒ってる。
卑怯じゃないもの。
それに卑怯って言った方が卑怯なの。
だって、ニンジャは正義のミカタ、だから。
タマも、残像、するっ。
「くっ、瞬動か!」
オジサンの斧をクナイで受け止めながら、距離を取る。
う~ん、ちょっと違う。
オジサンが短剣を投げてきたのをひょいひょいと避けながら、向こうで戦うご主人様をよく見る。
う~ん、難しい。
ちょっと動いて、ぎゅん、って動くのかな~?
「ちっ、簡単に避けやがって、これなら、どうだ! 『炎よ』」
オジサンが火石の付いた短い杖をこっちに向けてきた。
小さな火の弾が飛んでくる。
無駄にゃん。
これは、ここを、斬・れ・ば――解決っ。
「なんだとぉ! こいつ魔法を切りやがった!」
今度は、タマの番。
ちょっと動いて、ぎゅん、って動く。
「な、増えた、だと?!」
成功したみたい。
でも、勢い余ってオジサンのお腹にぶつかっちゃった。
口から血を吐いて死にそうなオジサンに、ご主人様が回復魔法を掛けてくれた。
ご主人様、ありがとなの。
「タマも倒し終わったみたいだね。衛兵の人達も来たみたいだし、こいつらを引き渡したら帰ろうか」
「あい!」
ご主人様が、えーへーの人に悪者を渡した後、お屋敷に帰る。
途中で変装を解いて「ぴーぷー」って鳴るお店に寄って「ヨナキソバ」を食べた。
「まさかラーメンの屋台があるなんてね」
「美味しい~」
今度はポチや皆も一緒に「ヨナキソバ」を食べに来たい。
「そうだね、今度はポチ達も連れて食べに来ようか」
「あい!」
だから、ご主人様の言葉が嬉しくて、シュタッのポーズで元気良くそう答えた。
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