【SS】熱砂の猛特訓(2)飛行靴編(タマ視点)

 ――楽しかった。

 動けなくなるまで遊んでミーアの作ってくれた水のベッドで休憩中。

 ポチも横で寝てる。


 アリサと一緒にご主人様とルルが転移してきた。


「みんな体に痛いところとか無いかい?」


 ご主人様が心配そうに聞いてくるけど、大丈夫。

 どこも痛くない疲れて寝てるだけ。みんなも同じ答えを返してる。


「加速門を使ったカタパルト発射と『殻』を展開した滑空ボード機能は上手く動いているみたいだね」

「でも、砂漠ならともかくポチみたいにバランスを崩したら、危ないんじゃない?」

「ポチは怪我してないですよ?」

「うん、普通だったら幾ら砂がクッションになるっていっても、あの速度だと砂漠でも大怪我をしちゃうよ。でも、滑空翼になる箇所以外も『殻』の薄い膜が搭乗者を守っているから、多少の衝撃は大丈夫だよ」


 ご主人様の説明は難しいにゃん。

 もうちょっと分かりやすく言ってほしい。


 ルルのくれた「すぽーつどりんく」を飲んで元気回復~?

 飲み終わったコップをルルに返して、タマと同じように分かっていないポチと一緒に手信号で遊ぶ。


「じゃ、次は飛行靴の方を試そうか」

「前に偽クラウソラスを飛行させるのに使っていた魔法回路ね。ようやく人も浮かべられるようになったの?」

「アレとはまた別の回路だよ。燃費が凄く悪いけどね。これに使ったのはオレの天駆を模した魔法回路なんだ」


 ご主人様のくれたピンクのブーツを履く。

 踵の横に付いた小さな羽根が可愛い。


「靴に魔力を通すと一瞬だけ力場ができて体を支えてくれるよ」

「あい~」

「がんばるのです!」


 にゅにゅ、難しい。

 きゅっと踏むと、足が引っ付く感じ。しゅっと抜くと落とし穴に落ちた時みたいになる。


 でも、大丈夫。

 だって、タマは忍者だから。


「おお、さすがタマだね」

「うは、空中を歩いてる。やるわね~」


 ご主人様とアリサが褒めてくれる。

 もっと、褒めて。タマは褒められて育つの。


「むむぅ」

「あうち! なのです」

「難しいモノですね」


 横ではミーアとポチが上手くいかなくて砂に顔から墜落した。

 リザはそもそも地面に吸い付いて浮かび上がれないみたい。


「がんば~」


 空中を散歩しながら、皆の応援。ご主人様に貰った「天晴れ」と「ヒノマル」の扇子を両手に「ちあがーる」の舞いを踊る。

 応援のときはコレだってアリサが教えてくれた。


 ありゃりゃ、目が回る~?


「大丈夫かい、タマ」

「空が回る~?」

「魔力切れだね。やっぱり、まだまだ改良が必要そうだ」


 ご主人様にお姫様だっこしてもらいながら魔力を分けてもらった。

 せっかくだから、このまま皆の応援をしよう。


 ご主人様の腕の中が暖かくて、なんだが幸せ一杯で眠くなってきた。

 お、応援しないと……。


 ――ムリにゃん。

 眠気の人は強すぎなの。


 ……おやすみなさ~い。ZZzz。


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