SS:モテモテ(アリサ視点)


 ん? この音色はミーアかな?

 さっきは、リザのトコで焼き鳥を食べたし、こんどはミーアと一緒に甘味もいいかもね。

 あの子は老人に好かれるから、よくジモティーしか知らないような質素なお菓子を貰ってるのよね。


 ん~っと、こっちの広場かな。かなっ?!!

 なんとぉ!


「アリサ?」


 驚いているわたしを見て、ミーアが小首を傾げる。くそぅ、可愛いじゃねぇか。

 ミーアの傍らでリュートの音色に耳を傾けていたイケメン達・・・・・が、一斉にこちらを一瞥し、すぐに興味を失ってミーアに視線を戻している。


 くぅ、なんだ! その態度は!?

 ミーアめ、いつもは子供みたいに「サトゥー」とか言って甘えるくせに、陰でこんなにモテていたとは!


 やさしそうな黒髪の影人シャドウ族の青年に、赤毛のヤンチャ系のレプラコーンの少年、それからキリリとした金髪の長耳族の青年、灰色の短髪で、ちょっと筋肉が多目の鬼人オーガ族の男性が、ミーアを守るように周囲に集まっている。全員、イケメンと称しても誰からも物言いが付かないくらい美形だ。これなんて乙女ゲー?


「ミーア、モテモテじゃない。浮気?」

「むぅ、違う」


 冗談で言ったのに本気で否定された。ちょっと言葉に、やっかみが乗ったのかも。


「我らはミーア様の休暇を守るために、はせ参じているのです」

「ミーアのリュートを聴くのが目的だけどね」

「様を付けぬか! ボルエナンのエルフ様方は、我らの仕えるべき主だぞ!」

「ふふふ、ミーア様はいつ見ても若草のように瑞々しい」


 黒赤灰金の順でミーアをチヤホヤするイケメン達。リア充爆発しろ!

 というか、わたしもモテたいんですけど! おもにうちのご主人さまに!


「アリサ、食べる?」


 ミーアが膝の上に置いていたリンゴみたいな赤い果物を持ち上げて聞いてくる。果物の中を刳り貫いて器にしたヤツみたい。中にはカットした果肉が、シロップみたいなものに浸かっていた。


「うん、一口ちょうだい」


 あ~んと口を開けて、ミーアに一匙食べさせてもらう。普段は、こんなに百合百合しい事はしないんだけど、まわりのイケメン共に見せ付ける為にやってみた。

 おお、睨んでる、睨んでる。さぞかし、羨ましいだろう。


 パクリとミーアの差し出すスプーンを咥える。味もリンゴみたいね。シロップはメープルたんかと思ったけど、これはハチミツかな? 違う、このネットリ感はアリ蜜の方だわ。う~ん、これならハチミツの方が合うと思う。


「何点?」

「60点かな。ハチミツを使えば70点くらい」


 わたしの厳しい評価に金髪イケメンがショックを受けている。あいつが作ったのか。うちのご主人さまといい、男のくせに料理上手なんて、どこの乙女ゲーのキャラだっての。


 男なんて、粉っぽいカレーとか、レトルトのお粥をレンジで爆発させるくらいでいいのよ。そうじゃないと、せっかくの看病シチュでも活躍できないじゃない。


 そんな機会は一回もなかったけどさ……orz。


 甘味ツアーに誘おうと思ったけど、ミーアの音楽を聴きに近所のご隠居達が集まってきたので、「後で」と言ってその場を離れた。老い先短い老人の楽しみを取っちゃいけないよね。





 犬人族の少年達に、屋台でご馳走になっているポチとタマを見かけたけど、あれは幻影に違いない。

 きっと、ミーアがイケメンに囲まれているのを見たのがショックだったんだよね。


 うん、ナナが白翼族と黒翼族の幼児を両手に抱えていたのも、きっと見間違い。

 誘拐じゃありませんように!


 空き地の一つで子供達の集団に出会った。うちの孤児院の子供達だ。社会奉仕の一環でやってる空き地の草むしりかな?


「あ~! アリサだ! ドロケイやろうぜ、ドロケイ!」

「ダメよ、アリサちゃんは、あたしたちとおままごとするんだから! アリサちゃんの魔王はすごいんだよ!」


 ああ、どうしてわたしに寄ってくるのはガキんちょばっかりなのよ~

 また魔王役をやらせる気ね。たまにはお姫さま役もやらせなさいよ!


 くそぅ、今日は悩む気も起きないくらい遊び倒してやる!


「順番に遊ぶわよ! アンタ達! 覚悟しなさい!」

「オウ!」

「わ~い!」


 日が暮れるまで、遊び倒して帰った。


 たっぷり遊んで、たっぷり食べたせいか、久々にアイツの添い寝ポジが廻ってきた日だったのに、寝顔を堪能するまえに先に寝てしまった。


 ああ、イチャイチャしたい!


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