第20話
ジュディスは困惑していた。
「ジュディスちゃん~!可愛すぎる~!」
「あ、あの・・・」
「とっても会いたかったのよ!ダンフォースにずっと邪魔されていたんだけどね。」
「え、えっとレベッカさ・・・」
「これからはお義姉ちゃんって、呼んで!ね?」
ダンフォースの姉、レベッカが、初対面にも関わらず、挨拶をすっ飛ばし、会った瞬間にぎゅうぎゅうに抱き締めてきたからだ。
「・・・姉さん。」
いつもより低いダンフォースの声に、ジュディスは驚くが、レベッカは素知らぬ顔を浮かべる。ダンフォースが、ひょいっとジュディスを引き寄せる。
「ダンフォース、お茶淹れてきなさい。」
「あ、お茶なら私が・・・。」
「ジュディスちゃんは私の相手!」
なかなかお目にかかれないような美女に、にっこりと微笑まれて、ジュディスは断ることができなかった。ダンフォースが小さく溜め息をつき「何かされたら大きな声を出すように」と言い残してキッチンへと向かった。
◇◇◇
「私のこと、狼か何かと思っているのかしら?」
レベッカは「失礼しちゃうわ!」と口を尖らせながらリビングのソファに、ぼすん、と勢いよく座った。そしてジュディスに隣に座るよう手招きした。
「あの、レベッカさ・・・。」
「お義姉ちゃん!」
「えっと、レベッカお義姉さん?」
「う・・・かわいい!」
身悶えするレベッカに、ジュディスは内心戸惑いながらも話を続けた。
「私の叔父のこと、ありがとうございました。あの・・・お義姉さんやダンフォースに、その、嫌なこと言ってませんでしたか?ダンフォース、教えてくれなくて・・・。」
申し訳なさそうに眉を寄せるジュディスを見て、レベッカは優しく頭を撫でてくれた。
「うーん・・・そうねぇ。怒ってはいたかな。」
「やっぱり・・・。」
「だけど、私はそういう方と戦うのが仕事だし、ダンフォースは、ご褒美のために頑張ってたの。ジュディスちゃんと結婚するっていうとっても大事なご褒美よ。」
レベッカは子どものように無邪気にウインクをした。
「私たちが頑張ったのは、ジュディスちゃんがこの先あの叔父さんのことで心を乱さないように、穏やかに暮らしてほしいからよ。だから、ジュディスちゃんの仕事は、あの叔父さんを忘れること。」
プロポーズの後、ジュディスはダンフォースから、叔父との関係を切り、接近禁止の手続きをして良いか確認され、お願いしていた。もう法的な関係は無くなっている。
「これからは、ダンフォースと私を家族だと思ってね。それから。」
レベッカは急に真面目な顔になり、姿勢を正して座り直すと、ジュディスの両手を優しく握った。
「ダンフォースと出会ってくれてありがとう。」
ジュディスが小さく頷くと、レベッカは満足そうに微笑んだ。その目には薄らと涙が滲んでいた。
◇◇◇
残り三話で完結予定です。
最後までお楽しみください!
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