人生は打ち上げ花火のように

夜のち晴れ

第1話 【人生は打ち上げ花火のように】

人生は打ち上げ花火のようにパッと咲いて散りたい。と言っていた彼女が死んだ。




 これまで彼女が生きた軌跡を表すかのようにたくさんの人と涙に包まれているであろうお葬式にも、昨日の行われたお通夜にも僕は行かなかった。行けなかった。




 残された僕ももってあと一年ってところだろうか。




 少しずつ動かなくなってきた身体を動かしてそう考える。




 朝日が突き刺すここはとある病院の一室。僕は小さなときに病気を患ってしまった。




 だんだん身体が動かなくなっていく、原因不明の難病だ。




 幸い、数年前までは薬のおかげで日常生活に影響を及ぼすほどではなかったのだが、最近はもう手足をうまく動かすことができない。これ以上病気が進行すると手足は完全に動かなくなり顔も動かせない人形のようになって死んでしまうそうだ。




 だから【人形病】なんて呼ばれている。




 死ぬことなんて怖くもなんともないが手足が動かなくなるのはとても困る。




 僕はベッドの横にある本棚を見てため息をつく。




 死ぬまでに読みたい本をまとめて買ってためておいたのだが、この一年間アウトドアな彼女に連れまわされたせいで読むことなくたまっていく一方だった。




 ただ、死んでしまってもう本を読むことができない彼女とは違い少ないながらも時間があるおかげで読もうと思っていた本は何とか読み切れそうなので今日は寄り道をして生前に彼女が本棚においていった本を読もうと思う。勝手に僕の本棚においていったせいで漫画や小説がたまっているのだ。




 決して死ぬまでに読みたい本ではないし読むことはないと思っていたのだが、何となく今日はこの本を読みたい気分だった。




 魔法によって病気にかかってしまった女の子の話しだったか。枕に顎を預けページを読み進める




「君は病気がなかったらどんな人生を歩んでたと思う?」




 この小説を読んで彼女が言っていたことをふと思いだす。




 病気にかかっていなかった人生か。




 多分僕は病気がないだけで今も一人で本を読んでずっと家に引きこもっていただろう。




 だが、君はどうだろうか。




 そんなことを考えていたら少しずつ目の前が真っ暗になっていった。




















 バン、バンとなる音で僕は目が覚めた。どうやら気づいたら寝ていたらしい。




 カーテンを開けて外を見てみると浴衣を着た男女が腕を組んで歩いていた。




 関係ないものと思って忘れていたが今日は病院の近くで夏祭りが行われると誰かが言っていた。




 確か彼女と出会ったのもちょうどこの季節だったか。




 病室の窓から見える打ち上げ花火を見て僕は彼女との一年間を思い出していた。

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人生は打ち上げ花火のように 夜のち晴れ @toriikarasu

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