第18日 異世界VS日本食 3
アニメにもなった『異世界食堂』は(他のサイトさんで恐縮ですが)ネットで公開された小説です。
毎週土曜日になる午前零時という、夜にご飯を食べてはいけない人、あるいは食べないでおこうと思っている人にとって、ひどくタイミングの悪い更新時間。
食べてはいけない時間帯に、ふいに襲い掛かってきて食欲を刺激しては読者を
「食うべきか。食わざるべきか。」
という葛藤の渦に突き落とす――元祖「飯テロ小説」と言われるゆえんです。
その『異世界食堂』ですが、この小説が面白かったのは徹頭徹尾、料理を見る視点が
「異世界人視点」
だったことです。
小説やエッセイで食事を描写する時、作家さん方は様々な方法で読者の心を刺激します。美しい色に譬えてみたり、柔らかさや匂いの表現もあれば、記憶や思い出を呼び起こすモノローグなど、ありとあらゆる手段を駆使します。それでも、なかなかおいしそうにならないというのに、この小説は
「日本人ではなく、地球人でもない人の視点。比較対象のない状況で、いかに日本独自の『洋食』を表現するか」
に軸足をおいたのです。
これがまた、かえって新鮮でした。
同時期の『居酒屋のぶ』が近いコンセプトを持ちながらも、異世界ものとしては王道の文明衝突も織り込んでお話が進んでいったのとは対照的に、『食堂』は異世界人による饒舌なまでの食レポモノローグが延々と一話完結で繰り広げられるというお話でした。
変な譬えかもしれませんが、これはもう、誰かと話しながら飲み食いしたい『居酒屋』と、一人で黙々と食べていても不自然ではない『食堂』という異なる舞台が導いた作風の違いじゃないかと思います。
食事描写にカロリーを振り切った小説でしたから、アニメ化の話を聞いた時は一ファンとしてうれしかった半面「え? あれってアニメにできるの?」とか思いましたが、そこはプロの仕事。実にきれいなアニメになりました。
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