第6日 命について学ぶ学習
ある日、地元の行事の助っ人で公民館に行きました。
地元の有志による体験授業が行われたのです。
仲間の一人が農家の傍ら趣味でニワトリの飼育をやっており一定数の有精卵が確保できたので、地元の小学生たちに孵化の瞬間を、そしてその後をみせてあげたいというものでした。
自然の命に触れることの少ない昨今、ペットを飼うことも昔ほど気楽ではありません。
覚悟をもって命と向かい合う意識が浸透したればこそ、ふれあいのハードルが上がったことは喜ぶべきことであり、同時に残念でもあります。
そんな、さかしい考えをよそに子供たちは大興奮。
毎日、ひなが孵るのを楽しみに学校に行く前に公民館のふ卵器(卵が孵化する適温を維持する装置)を確認しては、一喜一憂するようになりました。
また孵ったばかりのひながよわよわしい姿でなんとか歩く姿を見れば心配そうで、もこもこした黄色い姿になってからは元気な様子に笑顔になるなど、
「やってよかったなあ」
と思いました。
ある程度おおきくなってくると、ひよこといえど個性がでてくるもので、要領のいいのとどんくさいのと、などと若干見分けがつくようになったりもします。
かくいう私も、ニワトリのひなと触れ合うのは久しぶり。
恐れもなく差し出した手のひらに載ってくる彼ら(彼女ら)におののきながら、その熱に
「ああ、これが命なんだなあ」
などと思いました。
で。
当初このヒナたちは「ちゃぼ」のヒナであるときいていたのです。
愛玩用というか観賞用というか、ニワトリの中でもペットよりの品種。
「なるほどー愛嬌があるのは種族的な特徴なのかー」
などと益体もないことをかんがえていたのですが、ある日その情報に修正が入ります。
「それ『近江しゃも』らしいよ」
近江しゃも! 地鶏の歯ごたえと煮込んだ時の柔らかさが絶妙な滋賀県が誇るブランド鶏!
「…………」
もう。掌の上の黄色いのが鍋の具にしか見えない。
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