◆アリス・ドライブ その3
こんにちアリス!
今日は幽神霊廟の6層の草原地帯からお送りしています。
ところでみなさん、ジャイロ効果というのはご存知でしょうか?
私はよく知りません。
が、恐らくは地球人にとってはわかりやすいものでしょう。
例えば、高速回転するコマって、足がすごく細いのに倒れませんよね。
でも回転が遅くなると倒れちゃいます。
あるいは、自転車やバイクはスピードを出すと姿勢が安定しますが、遅いとふらふらします。
円盤が高速回転すると姿勢が安定する、というわけですね。
『それで出来上がったのがこれ?』
『青いタヌキ型ロボットが乗るタイムマシンでは……』
『アルミのパイプでできた障子戸というか、凧というか……』
『スチームパンク風、魔法の絨毯じゃん』
アルミのパイプで四角形を作って、そこに木の板を組み付けました。
そこに、機体左右に取りつけた自転車のタイヤが業務用モーターとバッテリーでぐるぐる回転する……という装置を取り付けてます。
もちろんこれで空を飛ぶわけではなく、あくまで姿勢を安定させるためだけのタイヤですね。
そして姿勢を安定させつつ、下から魔法で風を発生させて浮力を発生させる……というわけです。
試運転やテストプレイは一切してませんよ!
『そこはしろよ!』
スタッフさんにはこっそり強度計算などはしてもらっていますが、致命的にヤバいこと以外はできるだけ助言を控えてもらっています。
あくまで、視聴者の方々の知恵と私の頭脳で解決する、というスタンスで行きます。
では……!
『なんか大事なものが抜けてる気がする……』
『見守るしかないな』
『飛べ、アリス!』
さあ、風よ吹け……嵐を呼べ……! いや嵐はやっぱり来なくていいです!
『おっ』
『おお……』
『飛んでる……!』
おお……すごい……浮かんでます……。
ジャイロ効果で横に倒れるということもありません……!
まあ、ふらつくことはふらつきますが、普通に空を飛ぶより楽です……!
こんなに安定して飛べたのは初めてですよ……!
すごいすごい……!
私のパワーと、人類の叡智がここに合体しました……!
1メートル、3メートル……5メートル……!
もっと高く飛べますよ! 怖いからやりませんけど!
『……ところで』
『どうやって前に進むの?』
……。
…………あっ。
『上下移動……するだけ……?』
『これもう、ボスを移動させるエレベーターじゃん』
『青タイツロボを撃退するドクターアリスだ』
『マジレスすると、ドローンみたいに角度を関知して調整できるわけじゃないし、今は安定してるように見えても一度バランス崩すとヤバい』
そうじゃない、違うんです!
もっとこう……自由自在に空を駆けるネクスト・モビリティを開発しようと……!
『じゃあ、移動してみたら?』
できません……!
できないんですよおおおー!!!
◆
はい、部屋に戻って反省会です。
どうして駄目だったのか。
そしてどうすれば良いのか。
諸君!
『こんにちアリス』
『うーっす、大将やってる?』
大将じゃありません!
★☆★天下一ゆみみ:ドクター、次の実験をしましょう \30,000★☆★
ありがとうございます!
ドクターと呼ばないでください!
『ドクター。前への推進力を得たり、方向を制御する発想がなにもないのが原因かと』
そこのあなた、素晴らしい! グリフィンドールに10点!
そうです。とりあえず空に浮くことだけが目的となってしまいました。
仕様が甘かった、というわけですね。
そもそも私は単に宙に浮けばオッケーというものを作りたいわけではありません。
『じゃあ、どんなのほしいの?』
まず、空を飛んで私と同じくらいのスピードで前に進めることですね。
カーブしたりブレーキかけたりしたいです。
そんなに大きく空を飛ぶ必要はないかなと思います。
『高度は犠牲にしてもいいわけだ』
まあ、雑草や木々、泥とかに足を取られなければなんでもいいです。
それと、両手が使えることでしょうか。
足の踏ん張りや風魔法で制御したいですね。
『両手は操作に専念した方がよいと思うけど』
でもそれだと、突然空からワイバーンが来たときに対処できないですし。
魔王と戦う相談とかしてるときにワイバーンに来られるとめちゃめちゃうざいんです。
『話を中断させるタイプのワイバーン、実在するんだ……』
いやほんと、空はけっこう無法地帯ですから危ないんですよ。
地面はともかく空は自分のナワバリと思ってケンカ売りまくる有翼生物、けっこういますからね。
あ、そっか、地球にはドラゴンとかワイバーンいないんでしたっけ。
なるほどなー。
地球はいいなー。
『まーた異世界治安悪いマウント始まったよ』
マウントじゃないですー、純然たる事実ですぅー!
魔法とかブレスとか撃ってくるから危ないんですぅー!
いいですかみなさん!
制空権を竜族から奪い、我々のものにするんだという覚悟を持ってください!
★☆★ステッピングマン4号:話がデカすぎて草 \10,000★☆★
★☆★吉澤太一郎:そもそもバイク乗りたかっただけだろ! \3,000★☆★
スタチャありがとうございます!
テーマなんてその都度その都度フカせばいいんです!
『その用途だと、もう少しサイズ小さくしてフライボードみたいにすればいいんじゃね?』
……ふらいぼーど?
って、なんです?
『元々はマリンスポーツで、ランドセルみたいなバックパックとかサーフィン用ボードから高圧の水をぶっ放して空飛ぶやつ。水じゃなくてプロペラやジェットで空飛ぶタイプもある』
『なにそれ?』
『あー、なんか見たことある』
ほう。
ほうほう、ほう。
今ちょっとググってチェックしています。
……なんかこれ、よくないですか?
『アリスさんの場合、魔法で空飛ぶ推進力は確保できてるんだから、姿勢制御装置と風を受けるパーツがあればなんとかなるんじゃね?』
『そもそも失敗作2号機、あんなにデカい必要ないしな』
『搭乗者の耐久力が高すぎるから安全装置をはしょれるしな』
『それを言うなw』
いける、いけますよこれは……!
ドクターアリス三号機、開発スタートです!
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