◆アリス・ドライブ その1
アリスJK化計画を話し合っていた次の日。
アリスの荷物を整理整頓してて色々と問題が起きた。
「荷物全部は広げられないですね……。服とか小物はさておくとしても……」
「剣と工具は無理だな」
今、床には青いビニールシートが敷かれ、その上にアリスが使用した武器が広がっている。
短くて小さいものから順に並び、最終的には2メートル級の長剣が置かれている。
「……誠さん。この並べ方、なんか窃盗事件の押収品みたいでイヤなんですけど」
「写真撮っとこう」
「話聞いてますか!? いや見た目は確かに面白いですけどね!?」
「ごめんごめん。でもちょっと置き場所は考えないとな。庭の物置だと盗難されそうだし」
「ですよねぇ」
「いっそのこと、配信用の事務所借りちゃおうかなと思ってる。ガレージ付きの大きいところ」
誠の言葉に、アリスがぴくりと反応した。
「ガレージですか……!」
「そうそう。そこなら剣とか置けるし。あとアリス、免許取りたいとか言ってなかったっけ」
「あ、はい! 車とかバイクとか乗ってみたいです! 他にも色々やりたいことが!」
「たくさんあるだろうし、一つ一つやってこうよ」
「はい!」
誠の言葉に、アリスが嬉しそうに頷いた。
そして、荷物があまりにも多すぎて整理しきれない状況からちょっと目をそらし、今日もまた以前に撮影してアップロードした動画を振り返るのであった。
◆
幽神霊廟はめちゃめちゃ広いです。
一層から十層までは森林や草原が広がっていて、ただ攻略するために最短ルートを突っ切るならともかく、すべてをくまなく調べようとすると途方もない時間が必要です。
十一層から二十層までは氷河の世界で、広さのみならず自然の過酷さも牙を向いてきます。
ですので私、考えました。
この草原の大地を駆け巡る、新たなる足が欲しいと!
『おっ、なんか始まった』
『足ってことは、何か乗るの?』
イエス。
今日の配信は、このブルーシートで覆いかぶさったものが主役なわけです。
というわけで、さっそくお披露目! ばさっ!
『オフロード仕様の三輪バイク?』
『しかも無ナンバーだ』
それと、動画が始まる前に一つ注意を。
私は免許を持っていません。無免です。
そしてこのバイクも、無ナンバー車です。
どうしてそんなアウトローが許されるかというと、幽神霊廟の中は言ってみれば守護精霊の私有地だからです。スプリガンの許可を得てやっているわけですね。
これが日本の公道だったら決してやってはいけませんよ!
また、仮に合法の私有地であったとしても、自然にダメージを与えるような遊び方をしてはいけません。
また、私は10トントラックとぶつかってもトラック側を異世界転生してやるくらいのフィジカルがあるために多少危ないことをしても平気ですが、視聴者の皆様は決して私のような危ない真似をしないように。
『絶対無敵のダイヤモンドボディじゃん』
『常時スター状態の配管工』
『そこで笑わせてくるのやめろw』
はい、すみません。
というわけで、アリス★ドライブ行ってみましょう!
◆
ぐすん。
『知ってた』
『まあ、未整地だもんな……』
『湿地帯とかもあったし』
うっ、うっ、どうして……どうして……。
どうして新しいバイクが壊れちゃうんですかぁ……!
『そりゃ、沼に突っ込むのは無茶よ』
パッと見、普通の道に見えたんですよぉ……。
『ぬかるんだ地面に見えたけど、実際は底なし沼みたいになってたわけだ』
『ここから無理やりバイク持ち上げて脱出できたのがすげーよ』
『片手で200kgのバイク持ち上げて、片手でロープ引っ張ってジャンプするやつおる?』
『途中までは免許更新のときの安全講習動画に使えるやつ』
★☆★スーパーアルバイター:事故る奴は、安全確認が足りないんですよ \1,000★☆★
ぐううう……スタチャありがとうございます……! 反論できない……!
いや実際、反省するしかありませんね……。
私が悪かったです! すみませんでした!
それと、くれぐれも真似しないでください!
『できるわけねえだろ!』
はい。
しかしこれ、大丈夫かな……。
水が入ったせいか、エンジンかからなくなっちゃいましたし……。
『分解清掃すればなんとかなるでしょ……多分』
『アリスさん視点だとトロいけど、けっこうなスピード出てたしな』
『そもそもバイクは1トンのジャブを放つ人間の乗り物として開発されてない』
★☆★天下一ゆみみ:修理頑張れ \5,000★☆★
またスタチャありがとうございますぅ……。
いや、しかし、その通りです。
バイクや自動車はこちらの世界での運用は確かに想定されていません。
舗装道路はなく、ガソリンも手に入りません。
てか化石燃料を燃やして移動に使うって、ちょっと不効率じゃありませんか?
『話がいきなりデカくなったな』
こちらは魔物もいるからもう少し故障やトラブルに強い必要があります。
今ハマったのは底なし沼ですが、泥のゴーレムとか水の邪霊、火の邪霊といった底なし沼以上の天敵も存在するでしょう。
となると、現在の原動力ではちょっと不安があります。
『じゃあ、EVバイクとか?』
『あれは坂道で電気食うしな。オフロードだと流石に力不足では』
『タイヤとフレームがめちゃめちゃ頑丈な自転車をオーダーメイドするとか』
あっ、それはいいですね……!
ちょっと検討の余地ありです。
『ただ……チャリに乗って大剣を背負うの、若干絵面が……』
『不審者すぎるwwwww』
それは……うん。ヤバいですね。
まあでも、自転車に似合う軽い武具と組み合わせてあたらしいファイトスタイルを模索するのも面白そうです。
ですが! それはそれとして!
私に考えがある。
『一番信用ならないセリフ来たな』
『なんだか嫌な予感がするわい』
もっとお手軽に……たとえば魔力とかでエンジン動かせませんかね?
『手軽の概念が崩れる』
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