◆アリスファッションショー その4




 はい。


 負けました。


 ま け ま し た!


★☆★スーパーアルバイター:メイド様の戦い方じゃなかった 誉れを取り戻せ \2,000★☆★


 やかましいですよ!


 スタチャありがとうございます!


 誉れはともかく、約束は守ります。


 スクショでもなんでもどうぞ、この無様に負けた私のメイド姿を……!


★☆★天下一ゆみみ:ありがとうございます 家宝にします \30,000★☆★

★☆★ステッピングマン4号:死ぬかと思った 殺すという漆黒の意思を感じた \10,000★☆★

★☆★ホワイトラビット:おかえりなさいませって言ってください \5,000★☆★

★☆★青銅のヒハシ:待ってたぜ、このときをよぉ! \10,000★☆★


 うわっ、スパチャが10件……20件……どんどん来る……!


 流れすぎて読みきれないんですけど……!


 あ、ありがとうございます、後で名前を読み上げさせていただきます。


 みなさんのおかげで私はこうして生活できています。


 それはそれとして。


 覚えてなさい。


『いま1オクターブくらい低くなかった?』

『それは感謝の表現ですよね?』


 そんなことないですよー(裏声)


 しかし、まだ最後のゲームが残っています。


 今まで秘密にしていたゲームがね。


『wktk』

『やけに自信満々だな』


 そのタイトルは。


 VR格闘ゲーム『ギガロボクス』です。


『ボクシングゲーム?』

『なんかボクサーが体にメカとか鎧を付けてるけど……普通のボクシングじゃないの?』

『……わかった。そういうことか。無理ゲーだ』


 ふふふ。


 お気付きになった人もいるようですね。


 このゲームはただのボクシングゲームではありません。


 ギガロボクスという架空のスポーツで、身体機能を向上させるパワードスーツを着てボクシングをする……という競技になっております。


 装備をアッセンブルして戦うので、反射神経やVRゲームの腕前のみならず、状況に応じたセッティングができるかどうかも試されます。


 ……ですが。


 あえて何も装備しない『ネイキッド』という状態も選択できるんですね。


 このときはパワードスーツをセッティングするのではなく、生身の強さをセッティングすることになります。


 具体的には、このゲーム開発に協力しているフィットネス器具メーカーがその人個人の腕力やパンチ力を測定し、キャラクターに反映するんです。


 むしろこのネイキッドスタイルこそが、ゲームの本番と言えるでしょう。


『あっ』

『ふっざけんな!』

『勝てるわけがないだろう! 俺たちがアリスさんに!』

『あーもうめちゃくちゃだよ』


『ちなみに、アリスさんのパンチ力は?』


 本気でやるとパンチングマシーンが壊れるので測定不能ですね。


 上半身の力だけで打つ軽いジャブなら1トンくらいでしょうか。


 みなさんは課金装備でもなんでも付けてかかってきてください。


 軽く撫でてあげましょう。


『もう巨人と戦うのと変わんねーだろ』

『人類と戦うという気さえしない』


 さあ始めましょうか!


 死のゲームを!


『殺すな!』







 VRゲーム上のアバターは、デザイナーさんにお願いして私そっくりなのを作ってもらいました。


 どうです、この完成度?


 くるっと回ってぇー! はい!


『かわいくてえげつない』


 えげつないは余計です!


『ジャブで1トン出すのは文句なしでえげつない』

『1トンとは1000キログラムのことを言うのです』

『素手で自動車を解体できるやつじゃん』


 そりゃできますけど!


『できるんだ……』

『実際、ゲーム内でどれくらい強いの?』


 ああ、それは確かに疑問に思いますよね。


 ちょっとエキシビジョン的にNPC対戦してみましょうか。


 えーと、シングルプレイモードで……。


 対戦相手ヘビー級チャンピオン、マグニフィセント・マイケル。

 ベンチマークとしてはこの子が丁度よいですね。


『身長195cm、110kgが丁度よいベンチマーク……?』

『VRだと身長差がえぐい』

『だというのにまるで負ける気がしない』


 装備も最強で行ってみましょうか。


 フックとアッパーを最強にするエルボーロケットと……最上級防具のロズンデーライト・アーマーと……フットワークを加速させるマグネティックブーツ……。


 よし、敵の設定こんなもんですね。


 いっていましょう! ゴングを鳴らせ!


★☆★吉田輝和:ファイトマネー贈ります \1,000★☆★


 ありがとうございます!


 うおっと、気を取られてる間に距離を詰められましたね。


『速い速い速い』

『アリス視点だとめちゃめちゃ怖い』

『でも避けた』

『反応速度がおかしい』


 どちらかというとフレーム単位でのラグとかズレの方が問題ですね。

 このくらいの速さだったら実物の人間でもゴーレムでもさほど問題ではありませんし。


 それにパンチ力測定も999kgがマックスなので、全然本気じゃないんですよね……っと。


『ボディジャブ一発で悶絶させるな』

『ボディーアーマーが破壊された』

『拳の形にめりこんでる』


 さて、ジャブを連打して少し距離を取りましょうか……あれ?


『ジャブ三発でノックアウトしてるじゃん』

『見るも無惨だ』

『ひたすらに理不尽な暴力があった』


 え、えーと……。


 どや!


『どや! じゃねえよ!』

『なんかワールドレコード更新してるんだけど』


 あっ、やっちゃった。


 後で運営さんに連絡しておきますか……。

 流石に私のフィジカルでクリアされるのは想定外でしょうし。


 私のフィジカルは、挑戦者を叩きのめすためにあります。


『ヒエッ』

『その日人類は思い出した。アリスさんの強さを』


 私を倒せる者はいますか!


 私を倒せる者はいますか!


『ここにいるぞと言いたいところだが』

『ワンパンで倒される塩試合しか思い浮かばない』

★☆★天下一ゆみみ:ここにいるぞ! \200★☆★


 おや、天下一さん、クレジット投入ありがとうございます。


 それはつまり。


 覚悟しているということですね?


『おお』

『来たな……』

『骨は拾ってやる。骨が残ってたら』

『がんばれ!』

『3分くらいは耐えろ!』

『人間の可能性を見せてくれ!』


 ふふふ、チャット欄も盛り上がってますね。


 どうぞ好きにセッティングしてください。

 他のみなさんもどうぞお好きにアドバイスなりなんなりして構いませんよ?


『余裕すぎる』

『どれだけ負けてもここで勝てるからの余裕だったわけだ』


 さあ、かかってきなさい!



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