KAC20231 ヘアヌードとふんどし。

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　時は平成三年。毎日のように売っていた写真集がある。アレだよ、アレ。

『water fruit 』と『Santa Fe 』これで分かったそこの貴方、お買い上げありがとうございました。こっそり見ましたか？　それとも美しい裸体にクラクラしながら鼻血出しましたか？

　すごかったですね。あの写真集。『water fruit 』。だってヘアヌードですもの。誰の？　ほら今もご活躍の美しい女優さんだよ。白いワンコとCM に出てる女優さん。とにかく売れた。売れましたね。

　仕事帰りのサラリーマンは、レジ待ち客が少ないのを見計らって差し出すのだ。車雑誌や釣り雑誌の間に挟んだりしてレジに持ち込むのだ。初めてエロ本を買う中学生かよ。こっちの方が恥ずかしい。

　在庫が切れると予約の嵐。

「ウォ、ウォーターなんとかってありますか？」

「え？　もう一度お願いします」

　聞こえてたし、何か分かってたけど意地悪して聞く私。

「あの、ほら、今、有名な女優さんの写真集です」

「ヘアヌード写真集ですね。申し訳ございません。ただいま売り切れでして、ご予約されますか？」

大きめの声で返事をすると挙動不審になる男性たち。今でこそ珍しくもないヘアヌード写真集。当時はすごかった。

　時を少しずらして、『Santa Fe 』写真集が発売される。こちらも有名な女優さんの写真集である。ふんどしカレンダーで有名な女優さんだ。

　この『Santa Fe 』は１５０万部以上売れた。この記録はまだ誰にも破られていないらしい。悲しいことに買い求める客はタイトルと女優がごちゃごちゃになっている人が多かった。

　私は親切心でお客様に聞くことが多くなった。もう一度言おう。あくまでも親切心だ。困らせようなんて思っていない。

「ヘアヌードとふんどしヌード、貴方はどちらをお求めですか？」

　本屋でアルバイトをしていたことを思い出す時、必ずヘアヌードとふんどしヌードを思い出す。。