転生先の天才王子様はジャンクフードがお好き ~料理人で無双モード入ります。

REI KATO

転生~雌伏

第1話 転生したら王子様だった1

【転生したら王子様だった】ジュノー6歳


『坊ちゃん、しっかり!』


『お坊ちゃま、死なないで!』


 なんだか凄く必死の声が遠くに聞こえてくる。

 お坊ちゃまって僕のことかな。


 お坊ちゃまなんて僕はいいとこの子じゃないし、

 それに僕はいい大人だぞ。


 そう思いつつ、薄目を開けてみると。


『ああ、お坊ちゃまが目を覚ましました!』


『良かった、坊ちゃん!』


 二人の美形が僕にしがみついている。

 男性と女性だ。

 外国人じゃないか。

 

『これこれ、絶対安静ですぞ!せっかく息を吹き返したのに、君たちは何するんですか!』


 そういうのは白衣を着たお医者さん?


 どうしたんだろう。

 ああ、そういえば僕は急に胸が苦しくなり、

 意識が遠のいていったんだ。


 心臓発作が何かだったんだろうか。

 どうやら、死にかけてたみたいだ。

 重体じゃないか。


『坊ちゃまは狙撃されたんですぞ!動かさないように!』


 狙撃?

 日本でか?


『きっと次男の仕業ですわ』


『間違いないぞ』


 次男?僕は一人っ子なんだけど。


『下手なことを言わないように。陛下の後継者争いに巻き込まれたなどと、噂でも広めてはなりません』


 陛下だと?


『ねえ、ごめん。ちょっと聞いてもいいかな?』


『ああ、お坊ちゃま、お話になられた!なんでしょうか?』


『ここ、どこ?』


『お坊ちゃまのお部屋でございますよ。お城の離れの』


 お城?


『陛下って?』


『貴方様のお父上、国王陛下ですよ』


『意識の混乱がありますかな』


『お坊ちゃま、ご自分の名前を言えますか?』


『いくたさとし?』


『ああ、やっぱりお坊ちゃまは少し安静にしないとダメですね!いいですか、お坊ちゃまは、クノール王国第5王子、ジュノー・クノールでございますよ』


 その瞬間、記憶が蘇った。

 そうだ。

 僕はクノール王国第5王子、ジュノー・クノール。

 6歳の祝福の儀のときに、狙撃されたのだ。


 でも、僕は日本の記憶もある。


 もしかして。

 僕はこの子に転生したんじゃあるまいな?



『誰か、鏡を持ってきて』


『はい、お坊ちゃま』


 銅鏡を僕の目の前にかざしてくれる。


『あ』


 軽くウェーブのかかった淡い金髪。

 目は大きめの碧眼。

 鼻筋はすっと通り、キリッとしまった口元。

 そこを卵型のフェイスラインが包む。


 鏡にはショタ釣り放題の絶世の美少年が写っていた。

 ああ、彼はジュノー・クノールだ。

 つまり、僕だ。


 でも、僕はフツメンのメタボだったはずだ。


 じゃあ、これならどうだ。


(ステータスオープン)


  氏 名 ジュノー・クノール

  年 齢  6 性 別 M  種 族 人族

  祝 福 料理人

  ステータス

  ○筋力  41

  ○体力  38

  ○速度  42

  ○知力 584

  ○精神 515

  ○意思 262

  スキル 料理、4属性魔法

  特 記 

  ※ステータス。大人の場合、だいたい120前後になる。


 ああ、メニューがでてきた。

 転生確定だ。


 狙撃された拍子に僕は前世の記憶を取り戻したのか。

 いまだ混乱しているけど、ちょっと落ち着こう。



 僕は前世でメタボで多分心臓発作を起こした。

 そして、この世界に転生。

 狙撃されたショックで前世を思い出したのだ。


 狙撃の背景は。


 王家は5人兄弟。

 長男相続ではないので、

 後継者順位を巡って争いが起きている。

 争いの元は王子たちの母親。

 5人の母親は全員別人。


 ちなみに、僕の母親は数年前に亡くなっている。

 母親の実家も没落中。

 後ろ盾がない。


 こんな僕でも暗殺を目論むものが出てくるのは、

 単に僕が極めて優秀だからだ。


 僕は2歳で2か国語を話し始めた。

 5歳のときには古代語を学習し始めた。

 そして、この歳にして風魔法が発現している。

 王室始まって以来の天才だと言われているのだ。

 前世のモブが華々しい子に転生したわけだ。


 僕が狙撃されたのは、

 教会で祝福を受け、外に出たところだ。

 ガードの緩むときを狙われたのだ。



 ところが、僕の授かった祝福は『料理人』。

 わざわざ暗殺を試みなくても良かったのに。


 今後の僕の扱いがどうなるか、簡単に予想できる。

 王や保守派の人たちに

 大きな失望と憤りを与えることになる。


 料理人なる実技系の祝福は王室にふさわしくない、

 と考える人たちだ。


 でも、まだ安心はできない。

 慎重を期せねば。



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