届かない
@tatumito
Shortstory
彼のことをいくら思っても、
その思いが彼に届くことなんてない。
わかりきったその事にたいしてなぜこんなにも悲しくなってしまうのだろうか。
そんなことを考えながら気づいたら家がある階へと着いていて歩いていた。
「お帰り」
聞き覚えのある声でいままで床をみていた顔が自然と上がった。
そこにはいてほしいようでいてほしくなかった人。
会いたいようで会いたくなかった彼がいた。
なんであなたがそこにいるの?なんでわざわざこんなとこまで来ているの?そこまで近くないでしょ?もう日付が変わりそうだよ?なんで?
「なんでいるの?」
戸惑いのなか自然とでたのはこんな言葉だった。
本当は嬉しいのに嬉しくない振りをしてしまう。
冷たく言ってしまう。そんな素直になれない自分が嫌だ。変に強がる自分が嫌いだ。
「会いたかったから、てかはやくいれてよ、ずっと待ってたんだけど」
彼は急に来たくせにそうやって前もって連絡したのにまたされたみたいな口調で言ってくる。
そんな彼にたいして文句をいいながらも部屋の鍵を開けてしまう。
彼が好きだ。これはもう何年も前から気づいている。
だけど彼にこの思いを伝えることはない。だって彼の思いは違うから。
だけど私は彼からきっと
ぬけだせない
届かない @tatumito
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