34-0魔王様、ワクチンを打つ

 いやぁ、まさかの展開だよね。


 まずウェスト・ハーラと同時にイースト・キーンから宣戦布告されていたことにも驚きだし、魔王が3体いるってどういうことかな?


 魔王アムみたいな感じで他から召喚された?


 僕だけでどうやってやれと?


 しかも『染』の魔王、タナシン・ヒアーオールは僕に感染して操ってくると。


 初見殺しだよね?


 何が凄いって、試行回数重ねてやっと『染』の魔王が僕の前に出てきたってこと。


 そもそも出てくる予定じゃなかった。


 それをウーサーが、今となってはネーサーだけど、引き摺り出した。


 相当焦っていたと思うよ?


 でもね、ちょっとこれは失礼じゃないかな?


 食堂に向けて歩いている時に、美紗とアイがネーサーに声を掛けた。


「ネーサー、諦めようとしたっつー気持ちも分かんだけど、こう考えりゃ良いんだよ」

「そうだぜ? まずは、目を閉じて、敵の気持ちになってみな。なった?」

「ぬぉう? いきなりどうしたの? ミサ、アイ。まぁ敵の気持ちに? なったよ」


 2人が、ネーサーの耳元で囁く。


「無限残機のみーくんを相手にしてぇか?」

「ふおぉぉぉ……」

「はい、身の毛も弥立よだつそこからのー、味方に不死身のジェイドが王子様プレイだぜぇ」

「おぉ、おぉ!? ジェイド様! って思わず言ってしまうなコレは!?」


 ね? 失礼じゃない?

 ネーサーめっちゃ笑顔なんだけど。


「濡れただろ?」

「これは濡れるな」

「話してたらこっちまでナっちったじゃん」


 ねぇねぇ、ちょっとモゾモゾするの止めてくれない?

 野獣の眼差しを向けるのも止めてくれない?


 もうすぐ忙しくなるんだからさ。


 全部終わったら、相手をしてあげるよ。


 もちろん、全部終わったら。


 イースト・キーンの現状がまるで見えない。

 

 僕は、アイに『滅』の魔王の対応をお願いした。


 僕は受け取った大量のブループリントのリストに目を通す。


 過去の僕が教えてくれた。


 僕は『染』の魔王だけを倒せば良くて、『滅』と『狂』には触れてはいけない。


 つまり、このリストは全て『染』の魔王に対する物のはず。


 でもね、明らかに必要無いの。


 マスドライバー、対物ライフル、ガトリング、大量のダイナマイト。他諸々……。少なくとも、この魔王城や、この食堂に対して使う物じゃない。


 それでも、僕は過去の僕を信じる。


 だから、僕は製造を止めないし、過去の僕が今に託したこのナノマシン入りワクチンを打ち込む。


 さぁ、おいで。

 タナシン・ヒアーオール。


 これから僕が、君の全てを殺してあげるから。


 程無く、タナシンは現れ、僕に瞬殺された。


ーーーー Norinαらくがき ーーーー

タナシン、呆気なくないかって?

もうこのレベルになると、殺るか殺られるかは一瞬でございます。

それ程までに、タナシンの強さは登場させた魔王の中でも最強設定です。

残り2体は?


…………。


次回、お楽しみに!



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