20-5龍の墓場⑤
ーーーー ドラン・ハミンゴボッチ ーーーー
たかが魔獣と侮りました。
普段の私であれば、恐らくそう苦戦することのない相手。
移動に力を割き過ぎました。
左腕がやられてしまったのは……私の落ち度でございます。
ヨジラと睨み合いますが、ヨジラの視線は食欲に満ちております。
やたらと目をアチコチに泳がせておりますが。
「ウム、ヤハリ旨イナ、龍ハ」
私を食べることしか考えていないようですな。
反射によるダメージもそこそこでしょうが、折れていた左腕を喰われてから反射ダメージが通りにくくなっているように感じております。
加えて、フランの力には到底及びませんが、腐食の力も感じました。
ジェイド様の言う通り、喰った相手の能力を奪う性質の魔獣でございますな。
あまり至近距離で戦わない方が良いのでしょうか?
それとも、反射ダメージが効く間に一気に近接戦闘で仕留めた方が良いのでしょうか?
ジェイド様は『星ノ眼』で見守ってくださっています。
しかし、こちらの戦闘区域に突入した瞬間からプツリと音信が途絶えてしまいました。
カクカクではありますが、小刻みに意図を持って動いていることから、あくまで音声のみの切断という状況なのでしょう。
もっとも、ジェイド様への忠誠心が振り切れている私ならば、その動きでジェイド様の言わんとすることを理解することなど容易いことでございます。
ふむ、どれどれ……。
あっちに行け? フランの方でございますか?
ヨジラも一緒に? 危ないのではありませんか?
その時、ウーサーのいる方から光魔法による信号が見えました。
コ チ ラ ニ ツ レ テ コ イ。
ジェイド様の言う通りでございましたな。
しかし、言うは易し。
そう簡単にヨジラが誘導されるとは思いませんが……。
とりあえず、ヨジラと組み合って考えましょう。
右腕一本ですと、どうしても力負けしてしまいますな。
「フゥン! マダ……マダコレ程ノ余力ヲ残シテイタカ。タップリ、解シテ柔ラカイ肉ニシナケレバナァ!」
ヨジラに押し負けます。
しかし、押される方向は狙い通り。
むしろ、ヨジラがその場に誘導させられているような……それは気のせいでございましょうが。
ウーサー達が何をしようとしているのかは分かりませんので、私は私なりの戦いを続けさせていただきます。
ヨジラが得た腐乱の力が、私の右手の皮膚と左肩を溶かし始めます。
対して、ヨジラは私の反射によるダメージで、両腕から血が流れ落ちています。
圧倒しているように見えるものの、ヨジラは反射ダメージを無視しているようです。
動きが雑に見えますが、それは短期決戦を考えているからでしょう。
息も異常に上がっているようです。
喰えば全て解決し、その能力を奪えるからでしょう。
もちろん、そんなことはさせません。
私は『称号喰らい』で口からブレス攻撃を放とうとしますが、ヨジラも対抗して口からブレスを吐き、拮抗します。
ほぼ、ゼロ距離での同時ブレス。
凄まじい衝撃波を互いに受けますが、怯みません。
怯んで、ブレスを緩めたが最期、致命的なダメージを受けるからでございます。
さて、この拮抗した状況。
ウーサー、貴方は何とかできるのですか?
「ありがとう、私が何とかするわ。『高貴なる死神』起動」
足下から、勇者ショーコの声がしました。
次の瞬間、縦に一閃。
光の筋が目の前に残り、ブレスが……ヨジラのブレスのみが消えました。
そして、私のブレスがヨジラの頭に直撃します。
叫び声すら出させない、我が最強のブレスが。
「『高貴なる死神』。物体以外を確実に刈り取る称号スキル。これで、ヨジラのブレスに使用する魔力を消し飛ばしたわ。あとは、お願い」
そう言い残して、勇者ショーコはフラフラと地上へ落ちていきました。
魔法限定の一撃必殺技ですな。
私のブレスは強力ですが、途中からの直撃だったため、ヨジラの頭はまだ原型を留めております。
私はドランを抱くように絡み付き、鯖折でヨジラの骨という骨を砕きました。
そこに、ウーサーからの火魔法が飛んできます。
そして空に向けて開くヨジラの口の中に……。
ガスの吹き出す音がして、私は飛び退きました。
その瞬間、巨大な火柱を立てながら爆発。
ヨジラは沈黙し、倒れました。
そうして、ようやく降り立ちました。
元の姿に戻り、片足と翼を貪られたフランを、右腕のみで抱き寄せます。
「パパ、フラン、がんばったー」
「はい、よく頑張りました」
フランの体はボロボロですが、意識はしっかりしているようですな。
「凄まじい魔獣であった。ドラン、この度の救援、感謝するのである」
「私からも感謝を。ヨジラの動きが私が知っているよりも悪くて助かった。きっとフランのおかげね。そして貴方のおかげ……敵ながら天晴れよ。私の扱いは好きにして」
「ぅえ!? ショーコよ、良いのであるか?」
「ええ、魔王軍と言っても、私の知る魔王軍では無いし、捕虜の扱いもきちんとしてる……はず?」
ウーサーも勇者ショーコも、ジェイド様を何だと思っているのでしょうか?
「列記とした捕虜規定がございますし、ジェイド様も手を加えておりましたので、心配される程のことはございません。それに戦況如何によっては捕虜交換もございましょう」
「それもそうね。むしろ、私のいた世界よりも優しい……それが魔王軍……頭がどうにかなりそう」
勇者たちは失礼ですな。
ともあれ、こちらの戦況は一段落でございます。
少し落ち着いたら、早々に帰還しましょう。
ーーーー キング・ヨジラ ーーーー
ふ……ザ……ける……ナ……。
コンナ……ところデ……クタバる訳にハ……。
油断なんゾ……ダガ……あの千ヲ超える珍妙な魔獣ドモは、イッタイ、何だっタ?
最後ハ、足ガ、動かナカッタ。
我の、右足ガ、切断マデ。
我、ココに敗北シタ。
ただし、コレでオワリと思うナ。
くくっ、我が、他力本願トハ、情けなイ。
ダガ、すぐだ。
こんな楽しそウな場所に、ヤツが、来ナイ、訳がナイから……ナ……。
ーーーー Norinαらくがき ーーーー
モ〇〇〜ヤ、モ〇〇〜♪
┌ー─────┐
│怒られるぞ!│
│私は逃げる!│
└──ー───┘
ヽ(^ω^)ノ三三 魔
( へ )三三 ┗獣┓三
く 三三 ┏┗ 三
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