本屋
内藤 まさのり
本屋で過ごす週末
こちらのサイトで日々活動させているのは私が活字が好きだからだ。今の若者には考えられないだろうが私の少年時代、青年時代には携帯電話というものは一般には存在せず、知識や情報はもっぱらテレビとラジオ、取り分け紙(ペーパー)で出来ている本を読むことによってしか得ることが出来なかった。そんな私が小学生の頃、毎週ではなかったと記憶しているが、最低でも月に一度程度、習慣にしていた行動があった。それは週末に大阪の街中にある大きな本屋さんに立ち読みに行くというものだった。
もちろん行った本屋さんで実際に本を購入する事もあったが、大抵の場合、立ち読むだけ立ち読んで、私は手ぶらで帰った。ただそうやって今回改めて記憶を辿ってみると、何も本屋に立ち読みに行く事だけが目的ではなかったように思えてきた。高校を卒業してから大阪を離れ、もう40年近くが経過している。それでも梅田の曾根崎警察署の近くにあった大きな本屋、確が一階一階は広くは無かったが6階?ぐらいまでのビル一棟がまるまる本屋だったのだが、その階段を上がり下がりして本を漁る記憶は今でも鮮明で、その本屋の記憶と一緒に、その頃の阪急電車の車窓から見る景色や、阪急梅田駅から降りて改札に向かう雑踏の景色が頭の中にセットで広がった。当時の私にとっては阪急千里線の終着駅、北千里駅から徐々に大阪の街に向かうにつれて濃くなるビル群や、梅田駅の雑踏、そして住んでいた近くにはない大型書店に〝都会〟を非日常を感じ、それに憧れていたのではないだろうか。
今回その想いでの本屋をエンターネットで探してみた。その本屋は〝旭屋書店梅田本店〟に間違いなかったが、そこには私を寂しくさせる情報が掲載されていた。何でも建物の老朽化などの事情もあり、既に閉店してしまっているそうだ。強く念じていたという事ではなかったが、何かの機会で大阪に行った際にはその旭屋書店を訪れて感傷に浸りたいという願望があったが、既に叶わぬものとなっていた。
終わり
本屋 内藤 まさのり @masanori-1001
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