本屋になれなかった魔女

真坂 ゆうき 

魔女、お店を畳む

 あーあ、なんか完全に計算違いだったなあ。


 人間界はあたしたちの世界と違って、空を飛べる生き物なんてそうはいないし、本を集めるのにすんごく苦労してそうだから丁度いいかなー、なんて思ってたんだけどさ。


 何なのよ、あの「すまほ」っていう薄っぺらいのは。


 あたしたちが魔法を使うみたいに指でスイスイしてると思ったら、調べたいことの答えが出てくるなんて、反則よ! それで本を買うことも出来ちゃうなんて。しかも早いし。


 あんなものが人間みんなに出回ってるんじゃ、わざわざ本屋には来ないよね。


 まあそもそも、あたしの本屋がお店なのか、って言われれば微妙なんだけどさ。


 家は何かぼろっちいし、店員あたししかいないし。人通りはそこそこあるから、中とか全部魔法使って綺麗にはしたんだけど、やっぱりそれっぽく見えないのかな。


 まあいいや、もう今日で店じまいだし。おや、誰か来た。お客さんかな?


 いらっしゃーい。たぶんキミが最後のお客になるよ。だって、今日も全然お客なんて来ないしさ。もう元の世界に帰ろうと思ってたところだったんだよ。


 え、元の世界って何だって? ふふ、それはキギョウヒミツって奴だよ。


 さあさ、そんなことは良いから、折角だからこの本に手をかざしてみてよ。そしたら君が今、どんな本が欲しいかがばっちり、これに書き込まれるってわけさ。


 面白いでしょ? 種も仕掛けもなーんもないよ。


 お、終わったかな、どれどれ……何、見るのは恥ずかしいからやめてくれって?


 はっはーん。キミ、もしかしてイケないこと考えちゃったのかな? まあそうだとしてもお姉さんは大目に見てあげるよ、そうら見せてごらん!


 何々、ええっと……【異世界転移のライトノベル】?


 なーんだ、キミ違う世界に行きたいの? だったら丁度いい、連れてってあげるよ、あたしの世界にさ!


 小説じゃない、が体験できるんだから、断るなんてことはないよねえ?


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本屋になれなかった魔女 真坂 ゆうき  @yki_lily

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