第41話 アリ? ナシ?

 新しいミスティアの小屋は、明日完成する。


 それを伝えると、ミスティアはとても申し訳なさそうにした。


「ありがとう。それに、ごめんね。いきなり竜を持ち込んできて」


「大丈夫だよ。俺も竜を見かけたら拾うと思うから」


 剣に巻き付いたやつとか。


「もー、こんなこと滅多に無いからね!」


「おっと、居候がようやく片付きますか。優秀な妖精は安堵しています」


「サイネリアはどうでもいいけど」


「マスター、援護を要請します」


「巻き込まれたくない。おやすみ」


 そう告げて、レストハウスを後にした。


 自分の小屋へと向かいつつ、ちょっと考える。

 ……予備って大事だな。もう一棟くらい、大きい倉庫みたいなの建てておこうかな。





「はー……迷惑かけちゃったなー……。ソウジロウは優しいから怒らないけど……」


 ソウジロウの姿が見えなくなって、私は思わずベッドに倒れ込む。


「竜のこと、怒らないどころか手伝ってくれるし……」


 クッションを抱く。

 これもソウジロウが作ったもの。


 っていうか、最初は一人だと大変そうなソウジロウを手伝うつもりだったのに、最近はあんまり良いところ見せれてない気がする。


「嫌われてないといいけど……う、なんか自信無くなってきた……」


 思った以上に、その想像で胸が痛い。

 っていうか覚悟してた以上にそれが辛い。


「……妖精、いるんでしょサイネリア。お酒持ってない?」


「肯定します。しかし、優秀な妖精も葡萄酒の準備はまだできていません」


 サイネリアがふわりと姿を現した。


 持ってないかぁ。

 なんか飲みたい。飲んで忘れたい。


「最近のわたし、かっこ悪いなー……」


 竜のことも間違えてたし。

 ソウジロウが竜に興味あるって言ってくれてはしゃいじゃったし。


 ……な、なんか勢いで密着しちゃったし。

 夢中になっててついやっちゃった。


「……あのさー、ニホンのこと詳しいわよね、貴方」


「嗜む程度に」


 妖精族はエルフも竜族も知らないようなことを、なぜか知っていたりする。


「チグサの言ってたことって、ほんと……?」


「なんのことですか?」


「えっと……人間とエルフって……あの、アリかナシかで……」


 むあああ!


「やっぱ今のなし! べ、別に! 私は下心なんて無いから!」


「レガリアの方にある場合は?」


「えっ……と、あ、あるのかな? どうかな?」


 今までそんなこと考えたことなかったし。だってソウジロウって神璽様だし。そういう感じなくて優しくって一緒にいてもいいなってマツカゼだって懐いてるし、最初に会った時だって――


「って妖精の言うことまともに聞いちゃダメだー!」


 変なことばっかり考えてる気がする!!!!


 え、でも考えるべきかも?

 だってほら、ソウジロウが迷惑に思っちゃうかもだし。

 いやもう迷惑よ迷惑。

 だってエルフって言ったら人間はみんなしかめっ面を最初に見せるものだからね。そういう感じなのよね。

 もうほんと生きる時間も違うし、文化も違うし。まあそうよね。


 ……そ、そうなのかな?


「あー、あのー……ソウジロウって、私のこと迷惑とか、そういうこと言ってたことある……?」


 こんなこと人に聞くの初めて。


「……そうですね、優秀な妖精が聞くところには」


「には?」


「『世界中の全ての贅沢品より、ミスティアと一緒にいたい』そうです」


「……………………へ、へぁっ!?」


 それってあのもし○▼※△☆▲※◎★●!?!!!!!???!!!!!?!!!!!


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