第30話 神様からのSOS(1)
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神様からのSOS
仁と天が1歳半になったある日、二人を抱っこしていた颯さんが徐に呟いた。
「分かった。それはいかないと駄目だな。」
「颯さん。どうしたのですか。」
「今、仁と天が教えてくれた。神が助けを求めている。」
「え?!何て?!」
仁と天は偶に神の依り代となり言葉を届けるようになった。
二人で交互にひとつの内容を話しているらしいが凡人の私には聞こえない。
通常は”眷属”と呼ばれる神の使いがいて、人間の言葉は眷属を通じて神に届けられる。逆に神の言葉も眷属を通じて降りる。
しかし、仁と天が生まれると、その体を使って直接神から言葉が降りてくるようになった。
不動明王の名代である颯さんの子供なのだから当然と言えば当然だが。
「S市のS神社の神が助けを求めてきた。」
「S神社って、四つに分かれてるあの神社ですか?!」
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S市は此処から車で高速道路を使えば1時間。街の中心に湖があり、湖を挟んで北と南に二社づつある夫婦神の神社。北の社二つは女神の神社。南の社二つは男神の神社。風、水の守護神であり、武勇の神、五穀豊穣の神として祭られている。非常にパワー溢れる神社で全国から参拝者は絶えない。
神様だから自ら浄化出来るのではないか。と思うかもしれないが、高次元に居る神は三次元には降りてくることは出来ない。現世の出来事は現世に居る者しか解決することは出来ないのである。
颯さんは不動明王の名代として現世で実体を持ち、魑魅魍魎と戦っている。
そこを見込まれてわが子を通じて神から依頼が来たということである。
**
「そう。そのうちのひとつ、北の社だ。放っておけば人間に被害が出て、大変なことになってしまう。」
「どんな内容ですか?!」
「境内に爬虫類が増える一方だそうだ。」 勿論一般的には見えない類のやつだ。
「人は一般的に神社や寺で願い事をするよね。願い事をするのは悪い事ではない。だが、作法も無く、神を敬う気持ちも感謝もせず、一方的に願い事だけをする人間が今の時代残念ながら沢山いる。そして、願いが叶わないと神を貶めるような言葉や行動をする輩もいるし、折角のお守りやお札もぞんざいに扱う人間が多い。
もっと酷いと、人を呪う為に祈りを捧げる輩もいる。そういう負の感情が神社というパワーが漲っている場所に落ちれば、どうなると思う?!」
「何らかの形になると云う事ですよね・・。それが、爬虫類の正体ですか。」
「そういう事だね。だが、逆に神社だからか巨大化することは無かったようだね。
一つ一つの感情がそのまま小さな爬虫類の形になって、沢山溜まっていると云う事だ。」
分かりやすく例えるならば、負の感情が油で神社のパワーを水にすると、水の中に油を入れてもまとまらないのと一緒と云う事である。
巨大化しなかっただけで、危険な事は変わらないし、沢山の魔物を相手にする分非常に厄介である。
「神様から依頼が来るなんてどれだけ切羽詰まった状態なんですか!」
「今夜行こう。」
「はい。お供します。」
そしていつも通り夜に出かけた。颯さんはオオカミに姿を変え、私を背中に乗せて走る。
車なら高速道路一時間の距離が、僅か10分で到着。仕事じゃなければもう少し颯さんと夜のデート?!を堪能したいところだが、残念ながらそうもいかない。
夜の神社周辺はシンと静まり返っている。鳥居も夜の闇の中、うっすらとシルエットが浮かんでいる。昼間と違って不気味な雰囲気である。
鳥居から中に入れば真っ暗な空間が広がる。昼間ならば掃除の行き届いた境内は厳かで清廉な空気に包まれ、清々しくて思いきり深呼吸したい場所であるが、夜はただただ不気味な黒い空間が周囲を包んでいるだけだ。
「静かですね。」
「ああ。存在と気配を消したんだろう。だが・・。わたしには分かる。」
颯さんはそう言うと、倶利伽羅剣を両手で持ち、不動根本印という印を結んで顔の前で剣先を上に向けて留め、眼を瞑って真言を唱えた。
”のうまく・さんまんだ・ばざらだん・せんだん・まかろしゃだ・そわたや・うんたらた・かんまん”
流れるように滑らかに早口で何回も唱えた。するとすぐに反応があった。
ガサッ!ザワザワ!バタバタ!ズルズルズル・・・
不快で不気味な音があちこちから一斉にしたのだ。
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