第24話「真夜中の奇襲」
ゆきはバレルがシャワーを浴びている間に一人、アジトの中を勝手に歩き回っていた。
「バレット、来るかなぁ?」
ここにデリンジャーが来た事はストーリーとは大幅にズレが生じている。ストーリーでバレットが行動するのは、明後日の早朝。見張りが交代する時を見図からい、交代の見張りとして、アジトへ変装して忍び込む。
「………けど、この状態で来るなら……」
「来るならなんだ?」
「ここについてから観察した結果、私なら見張りの少し少なくなる夜に変えるかなぁと……」
ガチャ
ビクッ?!
体が強ばる。頭に拳銃を突き付けられて身動きが出来ない。きっと動けば、次の瞬間ゆきの中身は辺り一面に無惨に散らばるだろう。
「来い。」
「は?へ?!え?!」
銃口を頭にゴリゴリと当てられる中、銃の持ち主に後ろから腕を肩にかけられて連れて行かれる。
こ、これが、人質のシュチュエーション?!……なるほど、なるほど、なんて感心してる場合じゃない?!?!このままでは死んでしまう?!
ゆきが連れて行かれたのはデリンジャーのゲストルームだった。
「あのぉ、デリンジャー様?」
「よく見てるんだな?」
銃を突き付けている主はデリンジャーである。
「あ、は、はい!私なりに何か役に立てたらと……」
「で?何で今日来ると考えた?」
「あ、いえ!本来は明後日の早朝に来る予定なんで、今日の夜来るかはわからないんですけど……」
「……」
「あ、あの?」
「何処から来る?」
「本来は北口の見張りが交代する時に交代の見張りに変装して来る、筈なのですが……」
「が、なんだ?」
「デリンジャー様が来た事でいろいろ変わっているので、この状況で来るとすれば、本来の人数より少数で夜に仕掛けて来るかと。」
「………根拠は?」
「バレット達はデリンジャー様によってレイヤーさんが殺された事で、本来内部に潜入していたウェルロットとレイヤーさんとが協力してバレット達を内部に侵入させる計画が頓挫した事になります。そこで、きっと、ピストレット、この間西のアジトへバレットと共に潜入した女性の性格なら、バレットの身の危険を察知してバレットに逃げる事を提案する筈です。」
「……それで?」
「しかし、バレットは南西のアジトを破壊する事を諦めたりしないと思うんです。いえ、彼には出来ません。」
「どういう事だ?」
ゆきはいたずらっ子のような笑みを浮かべて、デリンジャーに太陽のような笑顔を向けた。
「だってここにデリンジャー様が来ちゃったからです!」
「はぁ?それが根拠だと?ふざけるな。」
デリンジャーはトリガーにかけている指に自然と力が入る。
「バレットはデリンジャー様がレイヤーさんを殺した事を許さないでしょう。」
静かにそう言い放つゆき、ピンチの中にあってもゆきは何故か落ち着いていた。
「……」
「バレットは仲間想いですから。きっと、貴方に復讐しようとしてくる。もし、それが叶わなくても、レイヤーさんの準備してきた事を無駄にはしたくないと思いますよ。いえ、無駄に出来ないんです。彼は、ね?」
「………レイヤーが準備して来た事だと?」
「そう、もう既に、ここには……」
「っ?!」
「ああ!大丈夫ですよ!」
「どこがだ?」
「爆破スイッチ、ここですから!」
と、ゆきは笑顔でスイッチをポケットから取り出してきた。
「……お前。」
デリンジャーは一瞬不機嫌な顔をする。何を言いたいのか察したゆきは慌てて弁解した。
「あ!ち、違います!爆破スイッチの隠し場所を知ってるのはレイヤーさんだけで、レイヤーさんがスイッチを隠してる場所を知っていたので、バレット達が見つける前にちょっと拝借……えへへ?」
バレットの味方だと疑われてもおかしくないこの状況で思わず、苦笑いするしかないゆき。だが、デリンジャーは突然笑い出した。
「クハハハハッ!」
「???」
デリンジャーは突然笑い出して、ゆきからスイッチを受け取り離れた。銃口もゆきの頭から離れる。
「あの、ですから、バレットはこれを狙ってくる筈で、……」
「じゃあ聞く。ここを破壊するだけなら何故、当初バレット達は忍び込もうとした?レイヤーがスイッチを持って逃げて押せば解決だろ?」
「それはバレットはこのアジトに立ち寄る必要があったからです。」
「と、言うと?」
「ここで弾薬等を補給して行く事です。後、船を一隻持って行く予定でした。」
「……理解した。」
デリンジャーはそう言うと部屋から出て行った。
「デリンジャー様?!どこへ?!」
ゆきは慌ててデリンジャーを追う。
★★★★★★
その頃、バレルはシャワーから出るとゆきがいない事に気付いて怒りを露にしていた。
「ここでじっとしてろと言ったのに!!あのバカ女!!」
銃を片手にゆきを探しに部屋から飛び出していく。
★★★★★★
広いアジト内でゆきはすっかりデリンジャーを見失ってしまっていた。
「あれぇ~?デリンジャー様は一体何処に……キャッ?!」
ゆきが角を曲がった先で口元を手で押さえ付けられる。
「しぃー。静かに。騒がないで?」
こ、この人は?!
ガチャッ
冷たい黒光りした拳銃を突き付けられた。
「“死にたくないなら”、ね?」
★★★★★★★
バレットはアジト内部の倉庫にたどり着いていた。見張りが離れた時に素早く倉庫内へと入る。
「あとはここで弾薬を…」
ドンッ
バレットの胸にその弾は命中した。
「かはっ…」
「あとはここでお前を始末すれば終わりだ、バレット。」
胸を撃たれたバレットの目前にはデリンジャーが冷たい表情でそびえたっていた。
スノーバレット~悪役に恋した私は銃を握る~ ユキア @yukiasama
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。スノーバレット~悪役に恋した私は銃を握る~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます