第17話「そして、銃を握る」

「くそ!もう一回……」


「貸して!!」


銃を戦闘員からかっさらったゆきは安全柵に足をかける。


「なっ!?嬢ちゃん?!」


「あ、危ねぇっ!!??」


そして、銃を握ったゆきは吹き抜けを囲む安全柵から身を投げ出して飛び降りたのだ。


届かないかもしれない、それでも私はっ!私はバレル君を助けたいっ!!


「くっらえっ!!」


渾身の思いを乗せてトリガーを引く、M1911から弾丸が発射された。発射された弾はピストレットから外れ、ピストレットの肩からかけたショルダーバッグに命中した。


「何っ?!」


ピストレットが、弾が飛んできた方を見ると、そこにはゆきが落下してきていた。


「嘘っ!!??あの娘死ぬ気?!?!」


「これでっ!!」


届け!!届け!!!!例えここで私が……


ゆきはもう一発ピストレットへと撃ちこむ。命を掛けた、全てを掛けたゆきの思いの乗った弾丸はピストレットの狙撃銃を貫いた。


「なっ!?」


バキンッ


弾丸を受けた銃は破損した。


「やっ……?!?!」


ピストレットの銃を破壊する事に成功し、喜んだのも束の間、ゆきはそのまま下へと落下していく。


「し、し、し、死ぬぅうううううううううううううううううううううううううううううううううう?!」


★★★★★★


「あの、バカ女!!!!」


バレルは焦燥した刹那、咄嗟に倉庫内に置かれた貨物に眼をつける。バレルはゆきが落下していっている場所に近い所まで移動し、安全柵から勢いよく飛び降りた。


「おいっ!!」


「へ?」


バレルは勢い良く落下していく、ゆきの手を取る。


「バレル君?!」


ゆきの手を掴むと自分の方へと引き寄せた。そして片手で拳銃を握り、スロープに止めてある貨物トロッコの車輪留めを撃ち抜いた。トロッコはそのままバレルとゆきの真下まで転がる。バレルとゆきはそのままトロッコの中へと落下して突っ込んだ。


「……い、……てて、」


全身に軽い痛みが走る。だが軽傷ですんだのは、トロッコの貨物の中身は大量の綿花だったからだった。


「あれ?!生きてる?!」


「……当たり前だろ。」


バレルに抱き抱えられていた事からゆきはほとんど無傷ですんだ。


「バレル君!ありがとう!!」


「ありがとう!!じゃ、ねぇ!!お前っ!何考えて……」


「わぁい!やった!やった!生きてるぅ!!」


「うわっ」


死を覚悟していたゆきは、自分が生きている事に驚くと同時に喜びを隠せず、バレルへと抱きついていた。


「わぁーい!わぁーい!!」


「はぁ……」


バレルのため息がその場に漂った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る