初期ステータスが0!かと思ったら、よく見るとΩ(オメガ)ってなってたんですけどこれは最強ってことでいいんでしょうか?
夜ふかし
第1話 始まり
”パンパカパーン パンパンパンパン パンパカパーン”
小気味良い音が高らかに鳴り響いた。
意識を取り戻したとき、うつ伏せで倒れてる状態だった。
なんとか体は動かせるようだったので、重い体を起こしまわりを見渡す。景色に見覚えはない。少し距離はあるが、前方に巨大なゲートのようなものが立っているのが確認できた。ゆっくり歩を進めて近づいてみたところ、みるからにあやしいゲートではある。
しかし、まわりにはこれ以外何もなかったので、意を決してくぐってみることにした。ゲートをくぐると、どこかにワープするわけでもなくさっきの音が鳴り響いたのだ。
どこから音がなっているんだとまわりをきょろきょろとみまわす。
「あそこからか」とひとりつぶやく。
巨大なゲートを見上げるとゲートの裏側上部にスピーカーのようなものが装着されていた。
ほどなくして、空高くから何かが地面に向かって降りてくる。
このゲートをくぐることがトリガーだったのだろうか。
ストッ。
目の前に降りてきた2人が地面に着地するとその者達は黒装束を着てフードを被っている。かろうじて口元は視認できる。笑みをうかべている様子だ。口元が平たいUの字になっている。後ろは前の者の背中に隠れるような小柄である。
また、前の者の左右の肩あたりにラッパを持ったおむつ姿の赤ちゃん天使が2人。
黒と白の異様なコントラストだ。
“”パパパーン パパパーン”“
赤ちゃん天使達は持っていたラッパを吹きだした。
前にいる黒装束の者はゆっくり内ポケットに手を突っ込んで何かを取り出そうとしている。物を手にとれたのか取り出したものをこちらに向けて構えた。
あれは・・・・・・銃だっ!!
実物はもちろんみたことないが形状からして銃に違いなかった。
不気味な銃口がこちらに向けられている。
「ふっふっふっ」と高笑いが聞こえると、引き金にひっかけていた人差し指がゆっくり後ろにスライドした。
”パーン!!”
俺は死んだ!絶対死んだ!!痛い思いをするくらいならいっそひと思いに逝ってくれ!!
脳内で早送りされる思考回路。
ん!っとまぶたにぎゅっと力が加わったつむった両目、反射的に左胸を押さえた右手、その場にたちつくすポーズ。
・・・んっ!? あれ?痛く・・・ない?
おそるおそると目を開く。ぼやけた画面がじんわりからくっきりへ移行する。
視界には、銃口からひもで連なった旗が並んで飛び出ており紙吹雪が舞っている。
「おめでとうございまーす!」
「「おめでとうございまちゅ」」
フードを取った黒装束の者と赤ちゃん天使達が可愛い声を発した。
緊迫した状況でおめでとうといわれた経験がないので、なにがおめでたいのかわからない。
思考回路は一時停止。
「あなたは、この世界に送り出す記念すべき1人目の転生者なのです」
ポワーっと地球儀のような丸い立体物が現れた。
え、転生?ってか、まず俺、死んだのか!?
状況だけが先行して思考回路はついに周回遅れ。
「深く考えてはいけません。あなたは記念すべき初の転生者なのです。大変ラッキーなのですよ。何事も1人目は有利と相場が決まっているのです。・・・さぁいきましょう!すぐいきましょう!!ブルーオーシャンへ飛び込みましょう!!!もう説明はスキップでいいですね?!体験すればわかることです!!」
後半まくった様子で今すぐにでも送りだそうとしてくる。
「こういうのって詳しい説明とかあるもんじゃないんですか?」
「えぇ、説明は権利であって義務ではありません。しかーし、そんなにいうなら説明書を一緒につけておきますね。さぁ冒険の始まりです!レッツスタート!!」
体がぽわぁっと光り始めた。
「おい、ちょっ!ちょっと待ってくれ!俺は死んだってことだよな?せめて、死因だけは教えてくれないか?」
さっきの転生というワード。これが聞こえたからにはおそらく死んだに違いなかったが、生前の俺は超健康体の病気知らずだった。まぁずっと引きこもっていて誰からも病原菌を移されなかったので病気をしなかった説は否めないのだが―。
体の光の輝きはいったん停止したようだ。
「えぇぇ・・・もうこの際そんなのどうでもいいじゃないですかぁ? あなたは何事も理由がないと何も決めれないダメな人なんですかぁ?」
けだるそうな喋りになってきた。
「そもそも、まずあなたは何者なんですか?」
「あぁそういえば自己紹介していなかったですね?あたしは死を司る神リーパーでーす」
フードをとってからすぐに思ったが美人ではある。きれいな黒い髪にきりっとした瞳、色っぽい口元。
「リーパーさんですね。で、俺の死因はなんですか?」
「・・・・・・。」
もしかして恥ずかしい死因だった・・・のか?
その時、ザッ、ザーッ、ザッザーザーッ と
電波の砂嵐のような調子の悪い音が頭上から響いてきた。
「きこえ・・・?、きこえま・・・ 聞こえますか?」
ここにはいない別の人物からの通信のようだ。
向こうの人物は特に応答を聞かずに話し出した。
「リーパー様。誤って成仏させてしまった須木透さんの魂の件ですが、いつものように始末書をつくっておきましたので、後で印鑑押して事務局に提出してくださいね。期限は明日なのでくれぐれも忘れないように!私も忙しいんですからミスないようにお願いしますね!!」
とだけ言ってプツッと切れた。
どうやらゲートに装着された上部スピーカーから発せられたようだ。
須木透、スキトオルとは俺のことだが・・・
「あちゃー・・・。登場の臨場感をこだわってゲートにとりつけたスピーカーのスイッチを切るのを忘れていたわ・・・」
手で顔を覆っている。
「今のどういうことですか?」
「ぎくっ!」
「スキトオルの魂を誤って成仏させてしまったと聞こえたような・・・」
「ぎくぎくっ!!」
問いかけに対しぎくっと口から出るギャグみたいなリアクションをはじめてみた。「あっ急用ができちゃって・・・」といい、後ろをむいてそそくさと歩いて立ち去ろうとしている。おまえが来たのは上からだろうが。隠しきれないとふんだようだった。
「もうばれちゃったら仕方ないわねぇ~。実は推しのお経シスターズのライブ配信を見て木魚でビートを刻んでいたの。で、終盤興奮してちょっと早めに連打してたら近くの魂が成仏しちゃいましてぇ~」
「その魂は?」
「定期点検中だったあなたの魂~。魂が成仏しちゃうとこっちに来ちゃってもう元に戻せないのよねぇ。なんでこんな仕組みにしたのか。あっそうよ!悪いのは制度を作った事務局よ!」
何もかもこいつのせいな気がする。早く送り出したかったのは責任追及を免れようとしていやがったのか。
このやろう!!
と怒りたいのはやまやまだが、元の世界で引きこもりになってしまった俺は、そこまで前世に未練があるわけではなかった。強いていうなら、やりこんでいたネトゲのフレにお別れができないくらいか。けど転生して人生をやり直すことができるなら、このまま異世界にいくってのも案外ありなのかもしれない。強く怒れない自分に対して複雑な心境になった。
しかし、こちらの損が大きいので交渉はありだろう。何か役に立つものをと要求した。
「仕方ないわねぇ~。この子は役にたつはずよ、この子を一緒につれていかせましょう。おいでリリス」
そういってじっと後ろに隠れていた黒装束の子を前に出した。
「わたくしはリリスと申します。スキトオル様。私はこれからのあなた様の力になるため、日々精一杯、精進するよう誠心誠意努めます」
フードを取るとアニメにでてくるような可愛い子であった。
心の中でガッツポーズ。
「宜しくお願い致しますね」
3つ指をついてのお辞儀まで。
もしや3歩後ろを歩いてついてくる俺の理想の女性なのかもしれない。
立ち上がったリリスにリーパーはなにやら耳打ちをしている。
「・・・頼んだわよ」末尾の言葉だけ聞き取れた。
「では、いってらっしゃ~い」
再び体が光だすとぼぅっと意識が徐々に遠くなっていった。
「「まいど!バイト代おおきに!」」赤ちゃん天使達の声か?意識が途切れる寸前に何か聞こえた気がした。
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