やばい…可愛いすぎ…

言ってた通り、受験勉強の合間にどっちかの部屋で、2人で会って話して過ごした。

今日は春乃が孝司の部屋に行った。

今日は、絵理たちは帰って来るのが遅い。


「バカップルがいないの久しぶりだ〜」

孝司は、思いっきりノビをした。

「バカップルって言い方やめなよ」

春乃は、割と真面目に言った。

「呼びやすいんだよ。絵理とパブロ兄ちゃんじゃ、長いでしょ」

孝司は平気そうに言った。

「本人達聞いたらショック受けるよ」

「もう知ってるから、大丈夫」

「そうなの?」

「そうなの。それに9コ下の弟にイチイチ腹立てないって」

「懐が深い」

「懐〜?」

孝司は笑った。

春乃はバカにされたみたいで、イラッとした。


「怒ってる?」

孝司がニヤニヤした顔できいてきたので、春乃は無視をした。

「ねぇ」

「ちょっと、腹立つ…」

はっきり言った。

「あ、ごめん…」

孝司はすぐに謝る方だ。

「謝るなら言わなきゃいいのに…」

「…こんなんわがまま言えるのさ、浩之お兄ちゃんと春乃だけなんだもん…」

ちょっとしょぼんとして言った


「そうなの?」

「そうだよ。家で俺はバカップ…、絵理達の、お世話係だから」

「ま、なんとなくわかるけど」

春乃は笑った。

「俺が小6の時がピークでさ。絵理が無神経なの。男に家まで送ってもらったりさ。そのリカバリーを俺がするわけ。2人が結婚出来るのは俺のおかげなんだから」

「苦労してるね」

「でしょ…」

本当に疲れたように言った。


「博之兄ちゃんはアメリカだしさ。春乃の前でしかリラックスできない…。って…重いね…」


「今までの彼女には?そうやって素直に言ってたの…?」

「いや…」

孝司は、春乃に元カノの話をするのは嫌いだった。

「何で?彼女なのに?」

「…彼女だから良く思われたかったんじゃない…?」

(私には、良く思われたくないのか?)


「春乃がさ、聞いてくれたから」

「めっちゃ聞いてる」

自信満々に言った。

「スペシャリストだから。他に代われる人なんていないよ…」

「…」

「やべっ、俺、ホント重い…」

孝司は、下を向いた。

「私、スペシャルだったの?」

「え?うん」

「彼女の一個下の存在じゃなくて?」

「どっちかと言えば、彼女の一個上…」


「一個上?!」

「え…うん。彼女より、春乃いなきゃね…」

春乃があまりにも驚いた顔をしてるので

「重いですね…」

「いや…、そんな高い地位にいるとは、知らなくて…」

「ハハッ。高い地位?」

「…孝司に彼女できたとき…。私よりもすごく大事な人ができたんだなって思ってて…」「全然」

「…それ、彼女に失礼だね…」

「…だね」

「でも…。嬉しい」

春乃は、孝司の顔を見て笑った。


「もう…。その顔禁止…」

「可愛い?」

「うん…」


孝司は、春乃を横目で見た。

「ハグしていい…?」

「恥ずかしい…」

春乃は素直に言った。

「ん?…それは…どっち?」

孝司は頭を悩ませた。

「…いい…」

「ん?いいって良い?嫌のいい?」

「…うるさい」

孝司は大笑いした。

「じゃ、していい…?」

春乃の肩に手が触れた。

「ちょっと待って…」

春乃は、両腕で突っぱねた。

顔が赤い。

春乃はうつむいた。


「可愛い…」

「バカにしてる?」

「してない」

「嘘」

「ホント」

「可愛くて好き…」

「バカにしてる…」

「ホントしてないって」

「…」

春乃は何も出来ないのが恥ずかしかった。


「ゆっくりでいいです」

孝司はなぜか敬語で言った。

「春乃も待ってくれたから。10年も」

「今度こそバカにしてる」

「これはしてる」

春乃は孝司の肩を何回も叩いた。

孝司は、春乃が可愛くて笑った。

そして不意打ちで、抱きしめた。

春乃を見たら、一瞬放心状態で、その後両手で赤い顔を隠した。


「やばいね、それ…」

孝司は手を自分の胸にあてる。

「ドキドキする…」


春乃は頑張って、孝司の手を握ってみた。「春乃、それ、やばいから」

「ごめん…」

春乃はそれしか出来なくて、恥ずかしかった。

「違くて…。やばい、ごめん」

孝司は思わず春乃を抱きしめた。

「ほんと、可愛いすぎ…」

孝司はさっきより、少し強く抱きしめた。

春乃の顔も真っ赤だったけど、孝司も真っ赤だった。


「春乃、好き…」

「私も…」

「好き?」

「うん」 

「じゃ、言って?」

「…。」

「言って?」

「…しつこい…」

(あっ、言っちゃった)

孝司はまた大笑いした。


「なんか、幸せだ…」

孝司が言った。

「うん」


「よし、勉強するかっ!」

孝司は春乃の体を、そっと離れた。

「…」

「寂しい?」

「うん…」


「次は…受験終わってから…」


(一ヶ月も後じゃん…)

ちょっと膨れている春乃に、

「次は濃いから」

「え?!」

「激アツだから」

「え…」

「楽しみだね」

孝司はにっこり笑った。

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