本屋はレシピの宝箱
御影イズミ
でもそれ本当にお宝か?
とある日のお昼ごろ。
ライアー・シェルシェールとクレーエ・サージュは休暇の買い出しに街を歩く。
「あっ、これ……」
「ん?」
本屋の前を通り過ぎるとクレーエの足が止まり、同じようにライアーの足も止まる。
街路に向けて並べられた本の中に、新発売されたレシピ本がいくつか並んでいたようだ。
最近、よくレシピを見ながら奇妙な料理を作っていくクレーエにとって、新しいお宝を見つけたような目になっている。
対する被害者ライアーの目は一瞬にして死んだ。本屋の前を通り過ぎるだけなのに、死んだ魚のような、光を失った目になっていくのがよく分かる。
「ねえ、ライアーさん! 買ってください!」
「えぇ……またゴミが錬成されるヤツじゃんか……」
「ゴミじゃないです! 立派な料理です! それを言ったら本屋に並んでるレシピ本の内容、全部がゴミって扱いになるじゃないですか!」
「違う違う違う違う! クレーエ、お前が錬成した料理がゴミになるっつってんの!! わかる!? ねえ!!?」
あれやこれやと言い合う2人。本屋の前でするような内容ではないのだが、まあ、よくあるカップルの光景とも言えるだろう。
……本屋の店員がジト目で2人のやり取りを見ていたことには全く気づいていないようだが。
しばらくしてから、ライアーの方が折れた。これ以上本屋の前でやり取りするのも営業妨害になるからと、クレーエの買いたいレシピ本を買わせてあげることに。
新作漫画の発売日でもあるし、本屋に立ち寄ることは決まっていた。
いつもの漫画の最新刊を手にとって、クレーエが持ってきたレシピ本数冊を重ねてレジを通す。
今日はいつもより高い本代だなとは思いつつも、丁寧に詰められた袋をもらってクレーエに手渡した。
「へへへ。これで新しい料理が作れるぞぅ」
「頼むから蠢く料理の錬成だけはやめてくれよな……」
……なおライアーの願いは、叶うことはなかったそうだ……。
本屋はレシピの宝箱 御影イズミ @mikageizumi
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