体験型本屋さん

たから聖

第1話 不可思議な体験型本屋さん。

裏路地に入ると、そこには小学生低学年ほどの子供達が集まって、


やれ『コレにしろよ!』だの、

『コッチの本がかっこいい!』だのと騒いでいた。


俺は社畜3年目の疲れきったサラリーマンだ。



『今日は朝まで飲もう!』と思ったが、どうやら道を間違えたらしい。


Uターンして来た道を戻ろうとした、その時……。


と……

ある初老のサラリーマンが本屋から出てきた。



俺は不思議に思い、その初老のサラリーマンに話しかけた。


『す、すみません。あの〜何かあるんすか?』

『あぁ、??君はもしかして、ココは初めてかい?』


『???へ?は…え?』


『そうか、ココは素晴らしい本屋さんだ。私は日頃のストレス発散の為に通ってるんだ。ははは…』


『何があるんですか?』

『まぁからのお楽しみさ。ははは…。』


初老のサラリーマンは

やけにスッキリ顔で裏路地から出ていった。


俺は本屋の門をくぐると、また

の小学生グループが数名出てきた。


俺の頭の中はクエスチョンマークだらけだった。



(ホントに何なんだよ!?)

突然魔女の様な低い女性の声で

『いらっしゃいませ!』と…


声をかけられた。


俺は疑問に思った事を素直に聞いた。

『何なんすか??ココ。』


そして、魔女の様な老婆は説明を始めた。


どうやら、本を一冊選んでお金を払うと、疑似体験が出来る。

と…聞かされたので、内心は


(ホントかよ?)少しだけおっかなびっくりで試しにホラーものを選んでみた。



実は、俺は社畜時代前からずっと【廃墟マニア】だったからだ。


どんな恐ろしい体験が出来るか?

ワクワクしながらも本を一冊、

老婆に渡した。



一瞬、老婆の顔は曇った。

『あんたさん、ホントに後悔しないね?!』

『へ?!所詮疑似体験だよな?』



『みーんなスッキリした顔してるから、大丈夫じゃん?!』


『二言は無いね!!』



老婆は…裏からある用紙を持ってきた。そこには……

【命の保証は当店では負い兼ねます。】


という紙切れだった。



俺はふーんと…考えただけで、その大事な用紙をスーツのポケットに突っ込んだ。



老婆は…俺に声をかける。

『さぁ!始まるよ…!楽しんでおいで!』



『おっ、おう。』


『1つ注意するなら、ライフが2回目になったら帰ってきなさい。』


『は??!ライフ?まぁ分かった。』


ホラー好きな俺はワクワクしながらも不可思議なタイムワープ体験を始めた。






◇◇◇◇




体験型本屋さんの老婆は…時計を見ながらも、深いため息をついた。


首を横に振りながらも

とてつもなく



社畜3年目のサラリーマンが選んだ物語は、、、









【オーメン】だったのだ。


老婆は…気の毒そうに呟いた。

『あれほど言ったのに。』




『バカな客も居るもんだね。』


と……次にやって来た小学生らを接客し出した。







[完]


PS:補足、小学生グループらは、ウルトラマンや、仮面ライダー等に変身する疑似体験をしています。

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体験型本屋さん たから聖 @08061012

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