登校しよう

翌日俺は午前四時に起きてジャージに着替えて日課のランニングに出た。

 完全な無人の街中を風を切って走って行く。


 こんな早くから外を走っているのには勿論理由がある。

 昔俺は女装してランニングをした事がある。だけどその時、汗の匂いが男だ!っていってバレたのだ。あの時は本気で死を覚悟したよ。丁度通りかかった武蔵さんが助けてくれたからよかったけど、もし運が悪かったら俺は今頃中古品だった。(意味深)

 俺が男じゃなければこんな朝早くに起きなくていいのに……女の人もうちょっと自重してくれないかなぁ……寒いから


 いつも通り10キロを走り家に帰ると知らない靴が置いてあった。


 誰だろうと思いながらリビングに入るとそこには一人の麗人が座っていた。


「おはようございます。天霧師範代」


 そう何を隠そう俺の姉弟子である。


「おはようございます。それと志帆姉さんと呼んでくださいって言っているでしょう。私達は姉妹弟子なんですから」


 そう言ってニコリと俺に余裕の笑みを見せてきた志帆姉さん。だが俺は知っている


「そうでしたね。志帆姉さん」

「はぐっ!?」


 姉さんって呼ばれるとダウンすることを


「こいつ死ねばいいのに。姉さん♪ってそーちゃんに呼ばせるのは私の特権なのよ」

「お母さんもジェラシーよ」


 それと姉さんもこんな事でキレないで欲しい……学校にいったら姉さんが憤死しそうだから。あと、母さんは相変わらずよくわからん。


 それから志帆姉さんも混ぜて朝食をとった後制服に着替えた。

 うん。この紺色の制服カッコいいな。


 荷物を持って自室から出て母さん達の元へ向かう。

 倒れないが心配だけど以前制服姿なら見せてあるから大丈夫だろう。


「ああ……何度見てもカッコいいわ」

「そーちゃんの制服は危険ね。一体どれだけの女子が群がるか予想できないわ」

「ごふっ!?……た、耐えるのです志帆。ここで理性を失えばご主人様からの信用を失ってしまう!」


 ……うん。志帆姉さんがいる事を完全に忘れてた。ごめんね。


 そういえばなんで志帆姉さんがいるんだろう?武蔵さんが初日は護衛してくれる予定のはずだけど。そう思って聞くと


「あ、説明していませんでしたね。最近師範と何人かの師範代が立て込んでいたので、私だけが今日来たんです。そう言うわけでこれからは私が護衛を行わせていただくのでよろしくお願いします。ご主人様」

「……これから?ご主人様?一体志帆姉さんは何をいってるの?」


 大量の疑問符が俺の中に溢れかえった。


「実は私男性に対する奉仕及び護衛官一種、通称メイドに合格しまして。そのまま男性省に就職したんですが、師範が自分の後任として推薦、そして奈々美さんからの指名のおかげでご主人様の担当になりました!」

「What?どゆこと?」


 男性護衛官と男性奉仕師という職業がこの世界にはあって、それぞれ一人ずつがバディを組み専属での男性の担当になる。

 そして「男性に対する奉仕及び護衛メイド官一種」とは、その二つの資格を合わせた資格である。

 メイドはその資格内容から護衛官の資格よりも上に位置付けられる。国家公務員一種と二種のようなものだ。だからメイドは基本的に三組のバディを管理する中間管理職として採用される事が多い。

 つまり志帆姉さんは俺の担当になれないってことになるんだけど……


「優遇措置ですよ。ご主人様の様な優れた男性にはメイドがつくんです。それに権力者の子には数人つけられたりしてますし。それに師範もメイドの資格持っていますよ。だから担当者が師範から私に変わっただけです」

「……優遇措置ってそれ大丈夫なの?行政は公平じゃないといけないんじゃ」


 うん公平って大事だよね。でもそれ以上に驚きなのが師範だよ。あれがメ、メイ、メ、メイドとか……やめよう。想像したら一生後悔する。


「優秀な者には手厚い支援をするのは当然のことですよ。奨学金と一緒です」

「なるほど……なるほど?」


 一瞬納得しかけたけど、やっぱり違う気がする。だって俺小学校通ってないし、はたから見たらただの引きこもりだぞ?なんで俺に優秀の評価がつけられたのか全くわかんないんだけど。


「納得いただけましたか。それと明日から新しい護衛官が男性保護庁から、奉仕師が男性管理疔から配属されますのでよろしくお願いします」


 志帆姉さんの圧のせいで納得してないけど納得するしかない……少しやり返そ。


「了解……あ、そうだ。ご主人様だと距離を感じて寂しいから俺のことは名前で呼んでほしいな。志帆姉さん」

「ぐっ!……わ、わかりました。ではか、かな、奏斗様と呼ばせていただきます」

「耐えたわ」

「さすが18でメイドになっただけはあるわね」


 おお。まさかあの歯の浮くようなセリフに耐えるとは。母さんと姉さんも驚いてるよ。俺は羞恥で死にそうだ。


「では奏斗様これから移動するのでこちらの車に乗ってください」


 玄関に移動した先にあったのは黒塗りの高級車。……これ前世で大統領が乗ってたキャデラック・ワンに似た雰囲気を感じるのは気のせいかな。


「この車は、重さ9トンで、軍用の装甲を施してあり、化学兵器対策のために完全密封の空間を作り出すすごい車なんです。他にも色々ありますがそれはまた今度ということで」


 おうふ……がっつり大統領専用車レベルじゃん。一介の中学生には過剰防衛だよ。


◇◆◇◆

次話は19時投稿


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