桐生奈々美

私の名前は桐生奈々美。37才のシングルマザー。そしてとっても可愛いレイナと奏斗の母親。


 明日から奏斗が学校にいっちゃうからか、昔のことを思い出したわ。


 昔、私はこう見えても天才だったの。

 一度見た物は忘れないし参考書を読めば中の内容は一度で理解できた。だから、余裕で医学部に入れたし、特に苦労することもなく単位も取得できた。


 だけどある日思ったの。なんで私は生きてるんだろう?って。

 今まで一時的に好きになった物はあっても長続きした事はない。お医者さんを目指したのだってお母さんがなっておくと便利だって教えてくれたから。皆んなが好きな男の人にも私は興味がなかった。私には生き甲斐になる物がなかったの。


 自分の生きている意味を考えながら過ごしている時、なんとなく目に入ったのは公園で楽しそうに遊ぶ一組の親子だった。

 それを見て思ったの


 子供を作ろうって


 そう思ったら早かったわ。

 直ぐに男性委員会にいって精子バンクの中から私に適合した物を選んでもらって人工授精を行ったわ。


 そうして生まれたのがレイナちゃん

 生まれたばかりのレイナを抱っこした時、私はすっごい幸せだった。

 それで私は直ぐに次の子を妊娠したわ、だってレイナ一人だけだと寂しいでしょ。私の時はそうだったもの。


 第ニ子を無事妊娠した後、私は次の子が産まれるのを楽しみにしながら、レイナと幸せな日々を送っていたわ。そして妊娠14週目の時奇跡が起きたの


『はいじゃあエコーをしますね』

『お願いします』

『多分今日赤ちゃんの性別がわかりますよ』

『きっと女の子でしょう?』

『残念ですが女の子でしょうね。私も男の子はまだ担当したことありませんし』

『私は姉妹で仲良くして欲しいから女の子がいいわ』

『それは珍しい……はい女の子ですね。ほら股間のところに突起が……?え!?突起!?あれおちんちん!?じゃ、じゃあお、おとこのこぉ!!!?』

『え…えぇえええ!!!』


 その時の衝撃は今でも覚えてるわ。

 男の子を授かるだなんて考えもしなかったから。


 お腹の中に男の子がいるってわかってからは毎日がさらに楽しくなったの。

 前は男に興味なんてなかったのに、生まれてくるのは女の子がいいなんて思っていたのに、私はレイナの時よりも生まれてくるのを楽しみにしていたの。


 そして7月7日の正午に私は出産した。


『おぎゃー』

『お母さん男のですよ!元気な男の子が生まれましたよ』

『はぁ、はぁ……かわいい。かわいいわぁ。あなたの名前は奏斗。あなたのお父さんと同じ名前よ』


 この時私は幸せの絶頂にいたわ。だけどそれは4日後に消え失せた。


『かわいいわねぇ〜』

『あぶぅ』

『あ、目開けたわ。わ〜綺麗な紫。将来は絶対イケメンさんね……あれ?精子の提供者は日本人のはず……じゃあ眼白皮症!?』


 眼白皮症――先天性白皮症の一種で症状が目にだけ現れる病気。これを持つ人は通称アルビノとも呼ばれるわ。アルビノには皮膚、虹彩、毛髪の色が色素の不足によって薄くなるっていう症状が出ちゃうの。そして奏斗は青と赤が混ざった事により紫という目の色となったってお医者さんが言ってたわ。それと、非症候型と症候型があって症候型だった場合出血が止まらない、肺炎になりやすいなど合併症を伴うことがあるの。


 世間じゃアルビノって言うと肌が白くて羨ましいなんて言う人もいるけど立派な難・病・の一つ。そんな体で産んでしまった事が申し訳なくて何度も涙が溢れたわ。


 その後先生を呼んだり色々あって、こんな事になった原因がわかった。精子バンクの人が精子を取り違えてロシアとハーフの日本人の男性の物が私に提供されていたみたいなの。この時は大騒ぎになったわ。ただでさえ大問題なのに、そのせいで貴重な男の子に障害が残ってしまったんだもの。運良く奏斗は非症候型で他の障害もなかったからよかったけど、あの時は本気で男性委員会に殴り込みをかけようかと思ったわ。


 その後奏斗はスクスクと育った。容姿、性格共に理想的な子で今私は漫画の中にいるんじゃないかって何度も思ったわ。でも、そんな事よりもすっごく元気に育ってくれた事が一番嬉しかったの……あと元気なのはわかってたけどやっぱり心配で小学校に行く事は泣いて反対したわ。その代わりに恐神さんの道場に入っちゃって「あれ?これじゃあ学校に行くのと変わらない気が?」なんて思ったけど、いつの間にか許可してたの。なんでかしら?


 そして奏斗は明日から学校に行くことになる。

 奏斗が女の子に食べられちゃわないか心配だけど、レイナもいるし大丈夫よね……大丈夫なはず。

 ………うん、私も明日から防女対策を頑張るわ!


◇◆◇◆◇

次話は16時投稿

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