第30話
セリアが冒険者に向けて微笑みながら問いかけると、冒険者たちは素直に答えた。騎士はその様子を窺いながら、脱出できる場所に移動する。
「では、まず言い争いになった原因をお聞きしたいのですが。」
「!…それはっ」
「良い、俺が答えよう。あのリーダーに連れられて始めは半信半疑だった。しかしあの部屋に案内されて、リーダーさんから言われた事を忘れてしまっていたんだ。申し訳ない。」
「いえ。怪我人が出なくて良かったです。」
「ああ。原因は俺にある。一時期、王都の商会で取り引きを持ち掛けられた。そして、その取り引きを受けたが、報酬が貰えず、賠償金になった。賠償金は武器や防具を売ったことで、なんとかなった。それでも生活が貧しくなる中、冒険者稼業を続けていた時に、あのパーティーに出会ったんだ。だから、もし同じ状況なら、未然に防ぎたかったんだ。その行動も無駄になったが…」
「そうでしたか。それでは、その商会の名前を教えて頂きます。その行為だけで、今回のことは水に流しましょう。」
「っ!? 良いのか?」
「はい。こちらも情報として、今回のキッカケとなった商会を知っておきたいので。」
「ああ、分かった。その商会の名は…」
冒険者から聞いた商会の名前を聞き出したセリアは騎士に拘束を解いてもらい、冒険者パーティーを案内した宿へ連れて行った。宿では丁度、冒険者パーティーでの食事が開かれるところだった。
一瞬、食事会が殺伐とした雰囲気に覆われたが、セリアの仲介によって事無きを得た。食事会がセリアの仲介で宴会並みの食事会へ変わり、冒険者での対話が始まった。
セリアはその光景を名残惜しそうに見ながら、途中で宿の外へと向かった。向かった先では既に騎士が鷹を連れて待っていた。セリアはその鷹の背を撫でて、騎士に用件を伝えると騎士は速やかに伝聞を書き上げ、鷹の足に括り付けて空へと放った。
その日の晩、子爵家屋敷のある個室にて。小窓から1羽の鷹が窓越しに一鳴きする。セリア付きの侍女であるローナが小窓を開けて鷹を招き入れた。ローナは鷹の足に括られた紙を
ローナは読み終わるなり、紙を部屋に設けられている暖炉の火に放った。紙が火によって黒く焼かれていく様を尻目に、セリアの寝室へと向かった。寝室の扉をノックすると、中からセリアの声が聞こえてくる。返事を聞いた後、そっとセリアの寝室に入るローナ。
「お嬢様、あちらから返事が来ました。問題ない、とのことでした。」
「そう。では例の商会について調べ上げるように頼んでおいてもらえる?もし出来るなら調べた上で、問題があるのであれば検問なども頼んでね。」
「はい、分かりました。あちらも、よく決断することができましたね。一令嬢の頼みとはいえど、こんな情報だけで動く貴族は少ないでしょうね。」
「まあ。物にもよるだろうけれど、約束を反故にしないだけマシと思いましょう。」
「はっ。」
商会を立ち上げたい 青緑 @1998-hirahira
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