第24話
セリアが商会経営の今後の予定を職員に告げた日の夜。侍女のローナと二人で今日のことを話し合っていた。話している間も、ローナには理解が及ばないようだったが、セリアが噛み砕いて話すことでローナも理解してくる。
「…結局、来訪の方は何を望んでいたのでしょうか?私には聞いていても、あまり分からないのですが。」
「そうでしょうね。でも簡単に言うなら、『“公爵”というコネクションを持った学生がいて、それも身分が低いのであれば、組合側に引き入れたい。』ってところじゃないかしら?組合に伝手さえ入ってしまえば、より商売をしやすくなるでしょうから。」
「ふむ。ということは組合は失敗した、ということですか?それなら私としては有り難いのですが。」
「いいえ。まだ油断できないわね。今回は視察官が来たけれど、もう少し上の方だったら来る可能性が高いわ。慎重に動けば多少の事は防げるでしょうし。」
「だと良いのですが。」
ローナとの会話をするうちに夜が深くなってくる。その間も、執事と侍女長は寝る間を惜しんで商会に関わる情報の方向性を変えるために奔走している。少しでも長く商会の噂話が遠退き、当主の耳に入らないように尽力していた。
日が上がった頃、セリアはまた商会へ向かうことにした。その道中でも馬車に近付く不届き者を騎士が気絶させていくが、未だにシリア商会の近辺以外は浮浪者が多く集まっている。そんな光景の中でも、セリアは俯くことなく商会へ向かった。
商会前では既に職員が孤児や浮浪者の身を清めながら、教鞭を執っていた。ある程度の知識がある者は商会の仕事を学ばせ、知識が薄いか無い者に対しては、まず常識を教え込む方針で動くように命じてある。これには商会を経営する上で、必要とされる人手を増やす狙いがあるのだが、他の職場と違い、ここでは学んだことを活用するたびに商品であったり給金を出すようにしている。それでも覚え切れない者も中には複数いるため、そういった人には実際の作業をさせて効率の良かった方を学ばせるように方針としていた。
「商会長、こんにちは。これからどちらに参られますか?」
「こんにちは。必要な決済を執務室で行います。それと近くに来ている冒険者の案内と、関係者の方々の案内を頼みます。商会の会議室にお願いしますね。」
「はい!承りました、それでは失礼致します。」
そういって広場に向かって小走りする女性を見送って、セリアと護衛騎士の2人は商会の執務室へと向かった。残った護衛は馬車に掛けた貴族印を外して、馬小屋に引いていくのだった。
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