第12話


 酒場で冒険者が集まり、結束を結んでいた頃。

 冒険者組合にある暗い執務室にて、連絡用の魔道具が光って置かれている。その近くにはセリアの受付を担当したものが手足を縛られ、その周囲には多くの組合員が静かにたたずんでいる。そんな中、魔道具から比較的明るい声が出てくる。


「やあ、朝ぶりだね。もっと先だと思ってたけど、連絡が早かったね。何か王都で対処できない問題かな?こっちはもうちょっと掛かりそうなんだよね~。あっ、セリア嬢には会った?」


『…っ!』


「この前ね。あまりにも冒険者組合の経理がうまく行かなくて、困っていたら学園で優秀な生徒がいるって学園長から聞いたのさ。それで話しかけたら意外と話の分かる子でさ、貴族の娘で無かったら卒業後に秘書にしても良かったんだけどなぁ。」


『………』


「それでね。ちょっと契約をしたんだよ。ちょっと高価な宝石を譲ってもらえる代わりに、冒険者組合は彼女に大抵のことは融通するって!…あっ、君ら知らせてなかったね。ごめんごめん、副組合長はいるかな?」


「本日は昼から遊びに行ったきり、帰ってきていません。」


「そっか。僕がいないと勝手に行動するのは困っちゃうなぁ。ところで、話を勝手にしちゃって悪かったね。報告を聞きたいんだけど、その前になんで筆頭受付嬢が縛られているのかな?」


「…それについては、まだ話せません。それと出来れば、他の職員にも話していただけたらと思うと、怒りを覚えます。以後、気を付けてください。」


「あっ、うん。ごめんね?…それじゃ報告を話してくれるかな。あっ、もちろん動けないから要約してくれると助かるよ。詳細は資料を使い魔で送っといて。」


「はい、わかりました。後程速やかに送ります。…それでですね、多分ですが組合長にとっては最悪の状況です。」


「ん?」


「…その、セリア嬢に契約を破棄されました。」


「ん?…もう一回言ってくれるかな、耳が遠くなったみたいなんだよね~」


「セリア嬢に契約を破棄されました。事の発端は筆頭受付嬢の言動、ですかね。高位冒険者を護衛にさせようとした結果、忠告だったのか警告だったのかは判断しかねますが、されました。しかし筆頭受付嬢は強行してしまい、数多くいる冒険者の前で契約破棄を言い渡しました。後程送りますが、契約書に破棄する、という文が出ています。」


「………」


「それと契約書には冒険者組合との契約を破棄した場合、破棄した本人の許可がない限り、再度の契約はできないとのことです。つまり」


「…許されなかった場合、彼女との契約は不可能に違いない、と。すぐに冒険者組合の総力を持って、セリア嬢に有益な情報を集めさせろ!そこの筆頭受付嬢には後日、罰を与える。それまでの世話を頼んだ。こちらも早々に打ち切る。」


『はっ』


 縛られた受付嬢が唸るなか、魔道具は光を失い、また執務室に影が差す。

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