第6話


 セリアは職員に別れの挨拶を済ませて帰宅することにした。

 来訪してきた者を警戒するため、離れた付近を騎士が駆け付けられるように移動しており、セリアを乗せた馬車は人気のない貧民街と表通りのさかいを走る。

 まだ夕刻にもならないのに、人が少ないのは多くの子供を商会へ招き入れ、老人を食事で招き込んだ結果だった。その老人を招くと、付き添いで家族が付いてきて、大きめの食堂として作られた住居で働いてもらっている。貧民街で生活していたからか、手先が不器用な子供が多かったが、家族ぐるみで雇うことで落ち着いた。


 それでも付いてこなかった者も、もちろん多いが、貧民街にある『裏組合』と呼ばれる施設にいるので、簡単に行動はしない。そしてできない。『裏』とはいうが、実際のところは冒険者組合と扱いは同じである。違うのは冒険者組合は依頼達成での報酬から税を抜き、領主館に渡し、その冒険者が税を払っているという証を冒険者に配っている。しかし裏組合では依頼達成での報酬は元のままで、子供の小遣いくらいしか手に入らない。裏組合には精鋭部隊がいるが、これを支持しているのはセリアだったりする。

 始めは子供を助けたついでの寄付だったが、裏組合にバレてしまい、寄付を要求してきた。だが特に止めず、襲撃されることを狙っていると、あちらから降伏するときた。これにはセリアも驚いたが、侍女長が昔入っていたことで納得してしまった。

 

 それからは支持はするが、何かあれば関係が破綻するので精鋭部隊と言っても、商人や貴族といった馬車を襲うことは少ない。逆に言えば、貧民街で移動すれば少なくとも表通りよりは安全である。

 そう昔のことに思い耽っていると、馬車が領主館へ着いてしまった。

 その日も、何事もないかのように思われたが、侍女から手紙を渡されてしまった。侍女は何も言わず去っていくが、封蝋ふうろうから学園からであることが分かった。

 学園の講師陣から自由行動を言われて領へ戻っていたが、手紙が来たということは確認しないといけないようだ。

 学園から、というより学園長からだったが、手紙の内容が世間話から始まり、既に数枚読んだ先で本題が載っていた。要約すれば…


 1.学園の中等部から高等部へ編入しないか。

 2.両親の承諾が必要である。

 3.学園長としては頭が下がるほど願っている。


 最後のは要らない気がするが、要は両親の許可をもらって高等部への編入を学園長としては押し進めたいので、許可だけでも取って欲しいということだろうか?

 あの父に許可してもらえない気がするのだが、一応、学園長へ返しの手紙をしたためる。

 どの道、明日は交渉が待っている。何かするにも交渉次第と、ローナの報告が朝来ることを願って眠る。

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