商会を立ち上げたい

青緑

第0話

 屋敷の大部屋に、赤茶色の髪で茶色の目をした13の歳となった少女がいた。少女の名はセリア・グラレスといい、新参の子爵家の令嬢である。

 セリアは本を読むことが多く、昼間までいることが多い。

 執事や家令に見つかると、父親であるガロアの指示により、宝石を取り扱う商人に合わせたり、ほかの令嬢による茶会への参加に躍起になることがほとんどだった。

 セリアは王立学園の中等部に入っていたが、上級生並みに勉学ができるため、講師陣はセリアに自由行動を申しつけ、高等部へ編入の準備することに決まった。そのため学園の寮から屋敷へ移動し、当主である父が帰宅するのを待ちながら、のんびりするはずであった。


「お嬢様、こちらでしたか。茶会への出席の確認を」


 そんな事情も知らず、学園から帰ってきたセリアに茶会への出席を確認しにくる執事ジジ。


「ん、どこの御方の茶会です?」


 セリアの質問に目線を外し、戸惑いながらもセリアに応えた。

 しかし家名を聞いたセリアは隠す気も更々ない雰囲気で言い放つ。


「その…、えっと…。キーシュ家の次男よりの婦人主催です。なんでも、当主様が婚約の触れを出していたそうで…」


「は? 出ませんわよ。キーシュ家と言えば、少し前まで商会での経営で賄っていた男爵家ではなかったかしら?」


「はい…、おっしゃるとおりです。最近では資金面に困っているとも聞いておりますが…」


 キーシュ家はセリアが手掛けた商会ができる前まで王都や他家でも知らない者はいない、とまでいえる規模の商会だった。数多くの支店を抱え、他領でも商業組合でも頭が上がらないと言われる程であった。

 しかし、その商会が建っている区域では富裕層や高い貴族位の領地だけであった。そのためグラレス領では農地以外の特産物も無いため、支店を置いてもらえなかった。グラレス領には他にも商会はあったが、どこも生活するのがやっとで、外から来る冒険者がせめてもの命綱だった。

 セリアの父であるガロアは多額の支援金でキーシュ家に頼もうとしたが、使者を出しても追い返され、しまいには商業組合に圧力をかけてきた。それを憂いたセリアが立ち上がり、商会の設営に対して勉学を励み出した。始めこそガロアが止めたり、母であるセシリアも取り上げるようにしていたのだが、屋敷での行動が制限されるようになってからセリアは屋敷を抜け出す日々が多くなった。

 商会を興す事業自体は商業組合も許可したが、資金が足りないことに当たると、グラレス領の護衛隊や懇意にしていた商店にセリアが掛け合った結果、商業組合と断った商店を除いた商店がセリアの興した商会に統合され、グラレス領からセリアによる商いが始まったのであった。

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