し. 珠里 ~悪い子じゃないので、葛藤します~
し. 1
「
「滑らないの?」
「ん…。靴。あわないみたいで、がくがくいうから…」
「壊れてるのかもよ? 窓口いって、交換してもらお? つきあうよ」
「…んー…、なんか、ケチがついたら、めんどくさくなっちゃった…」
「めんどーって、
いっしょに氷のフチ歩こうって言ったじゃない。
入館料と靴の分、遊ばないと損だよ損! 誘ったの
氷を後にして、靴底についているブレードを立て、よたよたと近づいてきたのは、渡部
部活動もクラスもいっしょのその子は、比較的、
その彼女が、
「ごめん…」
謝罪をかたわらに聞いて、ふぅ…と、一息ついた
「なに拗ねてるのか知らないけどー。あんた、
駅でも険悪だったよね。仲直りするのは止めたの?」
「う~。だって…。頭いいのに、なんでって思うじゃない…」
「
「そんなことないと思うけど…」
「どんなやつだって少しはそうだよー。まぁ、あたしも強い方じゃないけどさー。
よーするにぃ、ひがみ半分だとしても、頭良いヤツは、もっとちゃんとした、いい学校行けよ、ってことでしょ?
あんたなりの思いやりかな?
でも、統合する前の段階でケチついてるけど、あの学校、そんなに悪くないよ。
悪い噂、払拭しようとがんばってるし。ゆるく見せても、若者の矯正、救済、発展を目標として、模範的にね…。
動機がどうあれ、だからあんたも受けようって気になったんでしょうに。
…特進あるっていっても、それこそって奴ばかりだろーし、一般に混ざっちゃうと、多少は頭のレベル下がっちゃうのかも知れないけど、得るものも少なくないと思うよー」
「…うん…。…」
「あれにハラ立ててもしょうがない。極楽とんびみたいなヤツだからさ。
裏表もなさそーだし…。
知恵はついても天然ってやつ?」
「それを言うなら、とんぼだよ」
「トンボほどハカナクないでしょ。トンビでいいんだよ」
「うー…ん?」
「トビって、お手軽でのんきそーなイメージもあるけど、猛禽類。肉食だ。
実物見ると、かっこいいし、…カラスとか子育て中の小鳥には追われるけどね。
きりかえが速すぎるのか冷めてるのか、わからないところもあるけど、あの子って、薄情に思えるほど達観してるよね。
なんか、うらやましーくらい。
それこそ頭が良いってことなんだろーけど…。
あれは、いまからキャリアの
「そうじゃなくて…」
男子のうち三名が、スケート達者な
器用にも立った一人(カエルが足をそろえて膝おってるみたいな屈み腰加減ではある)が、その右前と左後ろにしゃがんだふたりと手を繋ぎ、
『これぞ、スパイラルスピン(俺ら流)』『氷上の大車輪』とか
『あぶない』だの『人の迷惑』だの、
『こっちに、(ぶつかりに)くるんじゃねーぞ』だのと、ブーイングされている。
『うまく切りあげないと転けるでしょ』
『
『不況なの?』なんてやり取りが交わされているそこに、
彼らの声は、会場のにぎわいにまぎれ、
それでも、楽しそうな雰囲気はうかがえた。
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