し. 2
「あたしはただ、ここに来たら、転びたくなくなったの」
「あそこ、私立落ちとか、通信のサポート目当ての苦学生とかセレブとか、
「面接で『好きな人がここ目指してるので、私なりにがんばりました』発言したってゆー子が、なに言ってるの。
「あれはぁ…(あせっちゃって…。
「
それはそれで、見直したんだよ?
そこまで一生懸命なって、破れたなら、もう開き直るしかない
「
これって、そーゆう気分、吹き飛ばそうって…そうゆう集まりだよね?
滑ってこけても、よっぽど、おかしな転び方しなきゃ、死んだりしないんだ…。タフな人間になるための気ばらしだって。
まぁ、
小学までフィギュアやってたから、やたらうまいしさ。
あれは、なんだかんだ言って、自分が滑りたかっただけなんじゃないかなぁ」
そこでふんぎりをつけたのか、渡部
「いま、考えてもしょーがないコトじゃん。早くふっきってね」
おぼつかない足どりで、氷上をめざす。
「ぅおーい、あたしもまーぜーてぇー」
うったえた彼女を拾いに、女子が三人ほど、こちらへ滑ってきた。
『ほら、行ってこい。
あんたはいっぺん、伊藤さんと
距離があったので、その声は
珠里の方をちらと見た
「
その口は、硬く閉ざされている。
「やっぱり、まとめてロッカーにぶちこみにいこーかって…、でも、この後…――」
「ロッカーのセキュリティは、あてにならない。めんどくさいって言ってたじゃない!」
「…うん。たしかに今更なんだけど…。疲れてきたし、寒いし、もう、けっこー足痛いしで…。
そろそろ切りあげて、買い物か、映画でも見に行こうかって(話が出てる)。
とっかかりの発言をけんもほろろに拒絶された
一連のさりげない動作のなかに、相手から、約ひとり半分、席を空けてベンチに腰かける。
さっきまで
「…
あたしが何かしたのなら、気づけなくて、ごめん。
何がいけないのか教えてくれる? ちゃんと謝りたいからさ」
(謝って欲しいわけじゃないもの)
それに、何を話せというのだろうか? と。
あらぬ疑惑が浮上してから、彼女に対し、とげとげしい態度をとっている。
我慢できなくて、あからさまに無視してしまうのは、子供っぽいし、してる方もおもしろくない。
陰険で、はきちがえていると思っていたから、反省もして…。
なのに、その彼女が、おなじ
どうして、
自分のことは棚あげに、
そのひとが居眠りして、英語の点数を落としたので…。
いけない考えと認識しつつも、
落ちても、そのひとの頭なら、どこでも行ける。だから、きっと平気。
せっかく頭が良いのだ。もっと上の学校に行くのが、そのひとの為なのだと。
良心と自分の思惑を天秤にかけて、
ほぼ確実といわれていた試験でドジ踏んだのは、
同じ学校を落ちたかも知れない仲間意識もあって、同情するゆとりが生まれていたのだ。
それなのに…。
そのひとは、まだ
自分には、真似できそうにない方向性、愚かににも勇敢にも思える選択肢で。
言ってやりたいことなら、山ほどあった。
核心にせまる前に、ぶちまけられる不平不満なら、いくらでも…。
だが、それを口にするつもりはない。
話すだけ無駄だと、思っていたし…。くやしいし…。
自分の嫌な部分。不品行をさらしだすようなものだとわかっていたのだ。
だから…。
「関係ない。話すことなんてないもの」
どう頑張っても、そうする以外の選択ができなかったのだ。
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