本屋
影神
雨宿り
私の住んでいる家の近くに。
いつも閉まっている本屋がある。
そこは、いつも閉まっていて。
本当にやっているのかすら、分からない。
私の家から本屋に行くには、
隣街まで行かなくてはならず。
少し、不便を感じていた。
だから。
そこが開いてたらなぁ、
と。度々思う事があった。
うちは母子家庭で。
皆が貰える様なお小遣いを。
当たり前の様に、貰える訳では無かった。
だから本屋に行っても。
特に何かを買う訳でも無かった。
私はあの本屋独特の匂いが。
好きだった。
そんなある日。
私は母親と喧嘩した。
出来れば喧嘩はしたくなかった。
お母さんが、毎日。頑張ってくれてるのは分かる。
でも、私だって頑張っていた。
それを。分かってはくれなかった。
外は、雨が降っていた。
タイミングが悪かった。
お金の無い私が、時間を潰せる所は。
公園くらいしか無かった。
けれど、今日は雨が降っている。
公園には、雨を凌げる様な場所は無かった。
隣街の大型ショッピングモールまで行こうか悩んでいたら。
いつも付いていない電気に気が付く。
「あれっ、、
やってる。」
そこは、いつも閉まっていた本屋だった。
私は扉を開ける。
すると、ベルが鳴った。
チリン、
「いらっしゃい。」
奥から聞こえたのはおじいさんらしき声だった。
外の見た目とは違い。
中は、開放的な造りになっていた。
まるで、雑誌で見たことのある様なカフェだった。
「うわぁ、、」
思わず、声が出た。
「意外でしょ?」
私に声を掛けて来たのは、優しそうなお姉さんだった。
お姉さん「好きな場所に。どうぞっ??」
「あの、、私。お金無くて。
前から気になっては、いて。」
お姉さん「あはは。
お金は要らないわよっ。
ここは、誰もが無料で。自由に。
気になる本を手に取って、見れる場所なのっ。
だから好きなだけ居て、良いのよっ、」
「あはは、」
私は恥ずかしかったけど。
少し。安心した。
私はそこで雨が上がるまで居させて貰った。
本屋 影神 @kagegami
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