第43話 物語は心の中で
(1)
「冬夜、今日は愛莉さんはお留守番か?」
「うん、冬吾達の世話をしてるよ」
「冬夜先輩、久しぶりっす!お元気でしたか!?」
「うん、お陰様でね」
パパの周りには沢山の人が集まってる。
今日は12月31日。
カウントダウンパーティの日。
渡辺班と呼ばれるグループのメンバーが一堂に会して行われる宴。
去年はパパは冬吾達の世話があるから来れなかったけど今年はパパだけでもと愛莉に言われてきた。
パパは人気者の様だ。
さっきから色々な人が挨拶に来てる。
当然石原家や酒井家も来る。
如月ホテルのパーティホールで行われる。
あのALICEや人気俳優の阿南直己や理恵子まで来てる。
そしてカウントダウンが始まる。
1月1日。
新たなる年の始まり。
皆が挨拶する。
眠そうな私に気付いたパパが私に言う。
「そろそろお家に帰るかい?」
「あら?片桐君折角だから朝まで付き合いなさい。大地と一緒に新條が送るよう手配するから」
「そうだぞ、とーや。たまになんだ!朝まで付き合え」
石原恵美さんと渡辺美嘉さんが言う。
父さんは朝まで残ることになった。
私は大地と家に帰る。
「天音の父さんってやっぱりすごいんだね」
「そうみたいだな……」
普段からは想像つかない。
母さんに頭の上がらない平凡な父親。
そんな風に思っていた。
家に帰ると「じゃあ、また昼頃に来るよ」と言って大地は帰って行った。
家に帰ると愛莉が出迎えてくれた。
「おかえりなさい。あれ?冬夜さんは?」
「朝まで付き合えって言われてた」
「たまにだもの、仕方ないわね」
風呂に入って寝ろと言われたので言われたとおりにする。
部屋に戻ると翼は既に寝息を立てていた。
起こさないように気をつけながらベッドに入る。
そして私も眠りについた。
(2)
1月2日。
俺達は宇佐神宮に初詣に出かけていた。
人が多い。
去年は色々あった年だった。
今年も色々あるんだろう。
翼たちは相変わらず食べまくっている。
お参りを済ませると折角だからとドライブをして帰る。
国東の海岸線を通りながら帰る。
地元に入る頃には日が暮れていた。
ファミレスで夕食を食べてから帰る。
家に帰ると梨々香とメッセージのやり取りをする。
茜はチャットをしているようだ。
21時を回ると眠くなる。
「おやすみ」と一言残して眠りについた。
1月3日。
今日もお客さんが沢山やってくる。
片桐家は大変なようだ。
俺達も挨拶にいった。
お年玉をもらえた。
遠坂家の親戚も来た。
同じ学校に転校してくる人もいるようだ。
お年玉をもらっているとかなりの額になる。
それは貯金しておいた。
お爺さんがクレカの番号を教えてくれてネットで買い物を済ませるから精々遊ぶ金と買い食いするかねがあれば十分だった。
毎月のお小遣いももらってる。
服とか欲しいものがあれば買ってくれる。
現金を渡されても正直使い道に困っていた。
そんな生活が待っていたなんて思ってもみなかった。
衣食住に困らず学校生活も充実していて、友達もいて、仲間がいて、恋人もいる。
何一つ不自由の生活。
そんな生活に感謝をしながら今日も梨々香にメッセージを送って眠りについた。
年を越すと冬休みはすぐに終わりを告げる。
(3)
始業式が終ると終礼が始まる。
授業は来週頭から。
紗奈と一緒に話をしながら帰る。
紗奈の髪も大分伸びてきた。
どっちの方が似合うかな?
そんな話をしながら帰っていた。
家に帰ると、昼食をとって部屋に戻る。
部屋に帰ると本を読んで過ごす。
時折来る天のチャットの相手をしながら。
夕食の時間になるとダイニングへ向かう。
そして夕食を食べて風呂に入ると部屋へ戻る。
そして時間を潰し時間になると眠りにつく。
やがて地平線から陽が昇る
もうすぐ夜が明ける。
朝と夜の物語が始まろうとしていた。
(4)
「司君、久しぶり」
「千夏、おはよう」
年が明けて3学期が始まって久しぶりに会えた。
この日を待っていた。
休みの日が寂しいと思ったことは初めてだった。
もちろんチャットのやり取りはしていた。
でも生の声を聞けるのは特別違う。
本当は君の温もりも感じたいけど今は我慢。
休みの時間何をしていたかお互い話しあう。
普通にクリスマスと正月を過ごしていたらしい。
紫と秀史君も来た。
4人で話をしていると担任が入ってくる。
終礼が終ると私達は家に帰る。
授業が始まるのは来週から。
家に帰るとテレビを見てる。
夕食を食べて風呂に入って部屋に戻りテレビを見る。
見たい番組が終ると眠りにつく。
機は熟した。
私達の物語が幕を開ける時が来た。
どんな世界を織りなすのだろう?
それは物語が始まった時知ることになる、
(5)
「純也君おはよう!」
教室に入ると梨々香の声が聞こえる。
元気そうにやっているようだ。
「休みの間なにしてた?」
「特に変わったことはしてないよ」
多分普通に過ごしていたと思う。
そんな他愛もない話をしていると担任が入ってくる。
そして始業式。
始業式が終ると、終礼をして帰る。
何処の学年も転校生が沢山来たらしい。
もはやSHは構成人数をもFGを上回っているんじゃないだろうか?
そんな話をしながら茜と帰っていた。
そして昼食を食べると僕はゲーム、茜はチャットをしていた。
「あれ?」
茜がふと漏らした。
「どうした?」
「うん、この人ひょっとして」
茜の技術ならチャット相手の個人情報を抜き取ることなど造作でもない。
逆にどんなハッカーでも茜の個人情報には届かないよう細工がされている。
「やっぱりそうだ。この人佐原君だ」
佐原壱郎。
今日入って来た転校生だ。
茜は「こんなところに無防備で入るのは危険だよ」とメールを送り付ける。
もちろん個人名は出さない。スカーレットの名前で送信する。
「君は誰?」
すぐに返信が来る。
「ここで正体を明かす人なんていないよ」
「君は平気なの?」
「うん」
その後もやり取りをしていた。
そして夕食の時間になると夕食を食べて風呂に入って部屋に戻る。
メールがまた来ていたらしい。
「お友達になってください」
茜はメールを返す。
「いいよ」
「ありがとう、分からない事ばかりだったから助かるよ。よろしく」
「よろしく、あんまり怪しいチャットとか入らない方がいいよ」
お前が言うのか?
「わかった。メッセージでやりとりできない?」
茜は迷っていた。
メッセージのIDをさらすと自分がSHのメンバーである事。片桐茜であることを知られてしまう。
考えた末答えを出した。
「いいけど、私がスカーレットであることは絶対誰にも秘密だよ」
「わかった!」
そしてメッセージのIDを伝える。
相手が素人だから問題ないと判断したのだろう。
もし何かやったら茜の過剰な復讐が待っている。
「え?同じクラスの子だったの!?」
壱郎は驚いている。
「そうだよ」
「すげえ!同い年でびっくりした!」
まあ、普通驚くよな。
「絶対秘密だからね」
「わかってる。よろしく」
「よろしく」
そうして二人はスマホでやり取りをしていた。
それが始まりだと俺は分かった。
茜にも始まりの時が来た。
死んで行く夜が過ぎて生まれて来る朝が来た。
僕達の物語は間もなく幕を開ける。
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