第2話

 私が駅に着いたのは6時50分、彼女が来たのは7時30分だった。

「ごめん、待った?」

 言葉とは裏腹に、全く悪びれていない。いつものことだが。

「40分立ち続けてる」

 わざとしかめっ面をしてみたが。

「そこ普通は、今来たところって言うもんだよぉ」

 笑いながら、私の頬を人差し指でつつく。こんな状況でも彼女の事を可愛いと思ってしまう私は、イカれているんだと思う。

「私は君の歴代の彼氏たちとは違うからね」

「まぁ、確かに。じゃ行こっか」


 幸い電車内は空いていて、二人掛けの椅子に座る事が出来た。

「ねぇ、行き先はあの夢の国なの?」

「そう」

「一泊で?」

「そう」

「なんで前日に別れちゃったの?」

「それな、一人でパァッと行っても良かったんだけどさ、もったいないかなって思って」

「だよね、いくら? 先に払うよ」

「あぁ、お金はいい」

「え、なんで」

 そのために誘ったんだよね、一泊旅行を予約してその前日に別れたから、その埋め合わせ、だよね。

「今日、誕生日でしょ、私からの誕プレってことで」

「あ、忘れてた」

 本気で忘れていたのだけど、彼女は目をまん丸にして驚いていた。自分の誕生日忘れるものなの? と。

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