第5話
「僕達は、ミレニアには帰らない。報告はしない。この状況は多分、彼らが作ったモノだ。故に、僕らはミレニアを信用しない。」
それが、僕の出した結論だった。
僕達は初めて、一つの町を捨てた。
いや、僕は捨てようと言っているのだ。
「アスカ…。それは、貴方の信念に…。」
「フェリティア、わかっている。…しかし、これはもう魔王との戦争なんだ。信用出来ないモノは切り捨てる必要がある。」
国が信用出来ないと判断したなら、僕はその国を捨てる。
僕の助けられるモノは少ない。
両手いっぱいに抱えられるものだけだ。
魔王を前にすれば、僕は僕以外を守るコトはできないだろう。
僕は茜ではない。
忘れてはいけないコトを忘れていた。
僕には全てを救うコトは出来やしないのに、茜の真似をしていた。
「アスカ、私はその判断を支持するわ。残念ながら、一度裏切ったモノは次いつ裏切るかわからない。」
「でも、アスカさん。貴方は世界を救いたいと言ったはずです。ならば…。」
誰の意見もわかる。
「僕は忘れていたんだ。僕が超人で無いコトを。だから、ここから先は魔王を倒すコトを優先する。この考えに賛同できないなら、ついて来なくても構わない。」
「アスカ…。」
僕は立ち上がる。
ここから旅に出る用意はすでにできている。
故に、僕は自分の荷物を持って歩みを進める。
「僕は、ここから一つ行った街、レティスを目指す。もしついて来てくれるなら、レティスで追い付いてくれ。」
信用出来ない者は切り捨てるべきだ。
これは仲間にも言える。
ここでついて来れなくなるなら、自分だけの方が、ずっと安全だ。
私達は、動けなかった。
突然に彼は変わってしまった。
魔族と戦ったコトで、何かを知ってしまったんだろう。
それは凄く残酷だ。
彼は勇者でないのだから。
私は立ち上がる。
彼と共に歩むと決めた。
彼に全てを捧げたのだ。
「フェリティアさん、行くんですか?」
「私は、アスカについて行くと決めていました。彼は私の勇者で、大切な人ですから。イリス、貴方は貴方の好きにして下さい。」
エリカもまた、立ち上がる。
「アスカは、正しい判断をしている。それに、イリスはアスカのモノなんでしょ?ならなんで、貴方は彼の元を離れるかを悩んでるの?」
エリカの言うコトもわかるし、イリスの言うコトもわかる。
「イリス、貴方は貴方の正しいと思うコトをしなさい。戻るべきだと思うなら戻るべきです。それだけの力が貴方にはあるのですから。」
私は彼が本物の勇者で無いコトを知っている。
最初は疑ったが、何度も聞くうちに真実が聞こえた。
私は、○○だから。
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