ゲーム配信者のおっさん、サービス終了が決まったソシャゲで本屋ちゃんの中の人が演じたキャラを最後に引き当て有終の美を飾る?

明石竜 

第1話

「ただ今の時刻、15時、30分を少し回ったところでございます。

サービス終了まであと30分を切ってしまいました」

 2023年2月28日のその時刻、ゲーム配信だけで生計を立てている

アラフォーのおっさんは、ややしんみりとした声でとあるソシャゲの

ライブ配信を行っていた。

 可愛らしい女の子達が活躍する四コマ漫画誌(ストーリー誌も一部あり)

連載作品のキャラクター達が一同に会するオールスター形式のファンタジーゲームアプリで、2017年12月11日に配信が開始され、この日の15時59分をもってサービスが終了されることが昨秋発表されていたのだ。

「持っててもしょうがないんで、残りの石8000ちょっと、合計200連分くらい

を使って、未所持のキャラを狙っていきたいと思います。ハイ〇リス様、まだ引けてない中で一番欲しいキャラなんすよ、CVは能登〇美子さん。もう20年近く前のことなんで、今の10代20代の子達は知らないかたの方が多いと思うんすけど、魔法先生ネ〇まの宮崎の〇かちゃん、本屋ちゃんっていう愛称の子の声役で選ばれまして、わたしはキャラソンCDでその声を初めて聴いて、衝撃を受けました。なんてかわいい声なんだ。癒されるぅと感じ、わたしが学生時代、一番嵌った声優さんなんっすよ。他にも苺ま〇まろのアナ・コッ〇ラちゃんとか、地〇少女とか他にもたくさん演じておりまして、そんなわけで、なんとしてでも手に入れたいと思っております。ピックアップ対象の時に引いておけよって突っ込まれそうですが、その時は他にも欲しい限定キャラがいて、出るまでかなりの石を消費してしまったんで、泣く泣くスルーした次第でございます。ちなみにネ〇まの作者さんは、今は漫画連載は休止して、国会議員をされてたりしておりますが」

 そう興奮気味に語り、ガチャ画面に遷移し、そのキャラも0.001%台で排出されるオールスターキャラクター召喚ガチャを回していく。

 初回10連、お目当ての星5キャラは当然のように出ず。

「100連超えて、星5キャラが何回か出ましたが、お目当ては全く出る気配がありません。まあ、確率的には当たり前なんっすけど」

 ところが、160連目。サービス終了時刻約10分前。

【すっ、すっ、凄かったです。次回も頑張ります】

「うおおおおおおおっ! キタキタキタァー! いやっほーい!」

 奇跡的にお目当てのキャラを引き当てることが出来、狂喜乱舞。

「仲良し度上げてシナリオ解放しないと。石残っててよかったぁ~」

 息つく間もなくすぐにそのキャラを進化させ、トレーニング出発、石消費で即完了を繰り返し、仲良し度を一気に上げシナリオを解放していく。

「ギリギリ間に合ったぁ~」

 全てが完了すると、ホッとした声で呟き、

「サービス終了一分前、59、58……」

 カウントダウン開始。

「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1」

 16時になった瞬間。

 オフライン版アップデートのためのメンテナンス案内画面に切り替わると、

「運営の方々、原作者の方々その他開発スタッフの皆様、サービス開始直後から約5年3か月、毎日欠かさず楽しませて下さり、誠に、誠にありがとうございましたぁーっ! エト〇リア、フォーエバー!」

 感謝の言葉を述べて、配信を終えた。

 そして彼はメンテナンス中に近くの本屋に向かい、発売されたばかりの、あのソシャゲにも参戦していた作品の単行本11巻を購入したのであった。


 帰宅後の夕方17時過ぎ。

「しまったぁー。やらかしてしまいました。オフライン版データに追加するのを忘れてました。カウントダウンやめとけば間に合ったのにぃ~」

 最後の最後で重要なことをやり忘れ、彼のオフライン版データには、最後に新規で

引き当てたあのキャラのイラストやキャラボイス、シナリオは追加されずに終わったのであった。


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