私の日課は本屋さん
野林緑里
第1話
私の日課は学校帰りに本屋へいくことだ。
別に本が好きだったわけではない。高校に入るまで図書館というものにも数えるほどしかいっていないぐらいに本を読まないのだ。
それなのに最近は毎日のように本屋へ行っている。
「いらっしゃいませ」
本屋に入る自動ドアが開くと店員さんの低い声が聞こえてくる。
そう。
私の目的はその声を聞くことだ。まるで声優さんのように心地よい声はいつも私を癒してくれている。
私はいつものように雑誌コーナーへと向かう。
それも日課だ。
本を読まない私が読めるものと言えば写真なんかが多いファッション雑誌といった類いのもの敷かない。もちろん文字を読むわけではない。パラパラとめくるぐらいなのだ。
だけど、必ず雑誌コーナーにくるのはレジの近くだからだ。
店員さんの会計のときの声が聞こえてくるからだ。
「いらっしゃいませ。○○円です。ありがとうございました」
その声を聞くために私は雑誌を立ち読みするふりをするのだ。
もちろん立ち読みだけではない。毎日のようにくる私を不信に思わないように適当に雑誌を買う。週に一回は買うのだから、この本屋さんのかなりのお得意様である。
おかげで未読の雑誌が私の部屋ひ山積みになっている。
古本屋に売りにいかないとなあと思いながらもそのまま放置している。
そういうわけで今日はなにか買おうかと思っていると、ポンと誰に肩を叩かれた。
振り向くと親友がいた。
「どうしたの?」
私が尋ねると親友はニコニコ笑顔を浮かべてた。
「もちろん、あなたの片思い相手を見にきたに決まっているじゃん」
「片思い……そっそんなんじゃないわ」
親友の言葉にぱっと頬が熱くなる。
「隠さなくてもいいわよ。どれどれ、例の店員さんは……」
親友はレジのほうをみる。
「あれ? 今日はきてないの?」
「え?」
親友の言葉に私はきょとんとした。
「だから、あなたの想い人よ」
「いるわよ」
「どこに?」
親友は周囲を見渡している。
「レジにいるわよ」
私がそういうと親友は目をぱちくりさせる。
「レジ? おじいちゃんしか……え? えええ?」
ようやく気づいたか。
私がうなずいていると親友は目を丸くして私と店員さんを交互にみると一言つげた。
「あなたって、おじいちゃんが趣味だったのね」
私の日課は本屋さん 野林緑里 @gswolf0718
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