第7話
「お? お!? 本当に痒さがなくなったぞ。こりゃあいい! 」
「シンちゃんは、結構可愛らしい顔立ちだったんだね… 」
髭と産毛のなくなったシンはがさつな性格と違って可愛らしい顔をしていた。
丸顔でそこだけはイヨと兄妹を感じさせるが、目だけを見るとぱっちりとした二重で、少しタレ目だがアーモンドのような整った形で、パッとしないイヨの目とは大違いだった。
横幅は広くないけれど目力があって、目と眉の距離も近い。男だけど目だけをみたら幼女のような可愛らしさを感じる。
眉毛も整えたが、太めの眉がよく似合っていた。
鼻筋も通って形もいい。残念なのは、歯並びが悪いところだけ。この世界に歯科矯正ってあるのかな。逆に八重歯が可愛いって言われたりするかもしれないが。ちょっと前の日本でも付け八重歯があったりしたし。
「おぉ……! 確かに。本当に涼しくて、これなら鍛治場でも快適に過ごせそうだ。」
「カイ兄は……美人ってかんじだ…… 」
カイは産毛がなくなると色がイヨよりも白く、頬も血色が良くうるつやのピンク色。
エラや頬骨が張っていないシャープな輪郭をしていて、面長で、鼻筋もきれいに通っていた。
睫毛のながい切れ長の瞳は、目力がそれほど強くないので威圧感がなく、口も小さくてぽってりとした厚めの唇が女性的なきれいな顔立ちをしていた。
あまりに綺麗な顔で、つい女性のようなアーチ眉毛にしてしまったよ。
そのせいなのか顔を剃ったイヨよりも、以前出会ったエルフに近かった。
髭が、産毛が、剛毛が、顔のすべてを隠しておったのだ……!!
何て言うか、負けた……っていう感情。
イヨは予想外に二人がイケメンで、ショックを受けていた。
顔剃りの効果として喜ぶべきなんだろうけど、あまりにイヨ(現世)との違いに悲しくなってくる。
血縁を疑いたくなるレベル……。
「ただいまー。今日もくっそ暑かったわー。」
「汗かきまくったから、クリーンの魔法一回じゃさっぱりしそうもな…… え? 」
「んん? 誰?? 」
「あれれれ? えー? もしかして、イヨ? ……と、カイ兄とシンちゃん?! 」
「みんな、顔、どうしたの?! えええ!! なんか、ヒューマンみたいになってる! 」
ばたばたと採掘組の兄三人が帰って来て、顔の毛がない事情と涼しさ!とにかく涼しさを説明したら、予想通り"俺も俺も"となる。
そして、三人を剃毛しているうちに母タエも帰宅。
食事休憩に立ち寄ったリュウも自宅の岩穴に帰って来て、涼しくなるならやってほしいとなったため、父ゲンを除く家族全員を剃毛することとなった。
結果、分かったことはまず母タエが美人だった。
頰毛を剃ると色白の肌につやつやの唇。くりっとした瞳はややタレ目で8人産んだとは思えない可愛らしさ。
その血なのか兄6人みんなそれぞれ美形で、イヨは思わず両手両膝を地についてしまう。
兄たちの髭と長い眉毛と剛毛な産毛の下から、美しい瞳が現れたのだ。
リオはタレ目だけどホリが深くて男らしい感じがするし、メガネのヨータはシンと同じく可愛らしい感じがするが目はゲンに似たつり目。
リュウはタレ目だけどそれほど可愛らしさはなく、スッキリとしているので優しい瞳にみえる。
ヨシはカイのように切れ長の瞳だが男らしさを感じさせるイケメンらしい顔つきだった。
ゲンは切れ長のつり目だから、ちゃんと両親のいい遺伝子をバランスよく配置したらこうなるんだろうけども、イヨはちょっと……バランス感覚に不足があったようだ。
「―――な、なんでや…… 」
イヨは思わず前世で言う関西弁で肩を落とす。
顔剃り前よりは可愛くはなったのに周りが想定外過ぎて、マジ解せない。
神様を恨んでも構わないよね…? と、鏡を見ながら思うのであった。
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