45話 再会
大きなドーム駅舎が見えてくる。カスティリア中央駅まで帰ってきたんだ。
ゆっくりとホームの停車位置に停車させてドアを開いた。
駅長がやってきて、ボクの車体をポンポンと叩いた。
「キミは救出のエキスパートだね。お疲れ様でした。」
乗客がみんな下車したので、減車させて帰る準備をしていると、タマミちゃんの両親がやってきた。
「先ほどは、ちゃんとお礼が出来ませんでした。タマミを助けて頂き、ありがとうございました。その上、タマミとお友達にまでなって頂いて。」
「いえ、本当に、ボクもタマミちゃんに仲良くしてもらってて嬉しいんです。こちらこそ、ありがとうございます。」
パタパタパタパタ・・
あれ?この聞きなれた足音は・・
「おかーさん!! おとうさーん!!」
あ、やっぱりタマミちゃんだ。
「え? あ! タマミー。」
3人は抱き合って座り込んでしまった。
3年ぶりの再会かぁ、嬉しいだろうな。
さて、と。ボクも列車区へ帰ろう。
「駅長さん、ボクもクラクトン・シーに戻ります。信号機さん、帰路の調整をお願いできますか?」
「少し前にクラクトン・シー行きの普通列車が出発したところですので、その後追いの回送で調整しました。直ぐに発車の準備が出来ます。」
出発信号機が答えた。
「あれ? あのご家族もクラクトン・シーへ帰るんじゃないのかな? もし、タマミちゃん、お父さん、お母さん。これからどうされるのですか?」
駅長がタマミちゃん家族に声をかけている。
「はい、クラクトン・シーの家へ帰ります。」
タマミちゃんのお父さんが答えた。
「それなら、ちょうど、回送列車ですが、クラクトン・シー行きが出発するところですよ。」
「え?駅長さん、良いんですか? 営業運行ではない回送列車ですけど・・。」
「王室2号列車は王室から解除指示があるまではコードレッドで運用中だと思いますよ。鉄道省の管轄ではありません。」
駅長がニコっと笑った。
「ありがとうございます。では、タマミちゃん、お父さん、お母さん、クラクトン・シーまで行きましょう!」
3人が乗り込んだところでドアを閉める。
「王室2号列車、前方の閉塞区間に列車が居るので、信号に注意のうえ、制限速度60キロで進行許可します。」
「出発、進行! 制限60!」
ふわぁん。
3人は楽しそうに話をしている。
カタン、コトン。
次は終点のクラクトン・シー。
タマミちゃんのご両親が、車窓を指さしている。
「踏切を超えて、小さな鉄橋、そして駅があるのよね。」
クラクトン・シーのホームへ停車する。
駅長が待っていた。
「おかえりなさい、お疲れ様、王室2号列車。」
ドアを開けると、タマミちゃん家族が下車して、ご両親が駅長と話を始めた。
タマミちゃんはボクと雑談をしていた。
「ねぇねぇ、ミーアとロム・アランも乗せたんでしょ? どうだった? タマミね、ミーアのファンなの。新曲もカッコいいのよ。」
「えー、1000人位乗せたから、誰が誰だか分らなかったよー。 もうね、シュナイド王子を守るだけでいっぱいっぱいだったし。でもね、シュナイド王子って凛としてて、とっても優しい感じの王子だったよ。」
普通列車の対応を終えた駅員が通りかかった。
「お!姫。おかえりー。」
「あー、もー。姫禁止なの!」
「いやぁ、もうみんな姫って呼んでるしねぇ。いいでしょ、姫なんだから。」
駅員が笑った。
駅長と話が終わったタマミちゃんの両親がやってきた。
「あ、タマミのおとうさんとおかあさんなの。よろしくね。」
タマミちゃんが駅員に紹介した。
「いつもタマミがお世話になってます。」
タマミちゃんのお父さんが挨拶して。お母さんがタマミちゃんに尋ねた。
「ねぇ、タマミ。姫ってなぁに?」
駅員とタマミちゃんが、一瞬顔を見合わせてたあと、駅員は「そうだ、掃除しなきゃ」独り言を言いながら駅舎へ向かって行き、タマミちゃんも「タマミ、お腹空いたな、早くお家へ帰ろう。」と駅舎へ向かった。
ボクと駅長は、その、あまりにもワザとらしい演技を見て噴き出してしまった。
タマミちゃんのご両親が訝しげな表情をしている。
駅長が微笑みながら話を始めた。
「実はタマミちゃんは、クラクトン・シー駅の人気者なんですよ。元気で優しいお嬢様で、周りを明るくしてくれてます。」
「そうなんですか? ご迷惑おかけしてなければ良いのですが。 ただ、なにかひっかかるんですよね・・。 タマミ、こっちへいらっしゃい。」
お母さんがタマミちゃんの両肩に手を乗せて、顔をみつめたまま、ゆっくりと「タ・マ・ミ?」と聞いた。
タマミちゃんは観念したかのように
「うんとね、タマミね、駆け込み乗車のお姫様なの。てへ。」
「タマミ、てへ、じゃないでしょ。皆さんにご迷惑かけて・・」
駅長が割って入った。
「いやいや、元気で結構なことですよ。タマミちゃんの駆け足の音が聞こえないと、寂しい位ですよ。」
「お恥ずかしい・・。」
「いえ、本当にタマミちゃんは皆のアイドルですから、ね、王室2号列車?」
「はい、本当です。なにせ、王国最大のカスティリア中央駅でも、有名ですから。」
「あ!王室2号列車さん、それは言っちゃダメ!」
タマミちゃんが両手を振った。
タマミちゃんの両親も一緒になって笑った。
魔法列車 @Sakamoto9
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