21話 救出

 全車両、新造車両へ移行完了。よぉしっ、ボク、完全復活!


次は、もちろん、タマミちゃんだ。どこに居るのだろう?

そうだ、魔力で線路を作れないだろうか? ボクの下に線路、ボクの前に線路・・

いや、全然ダメだ。流石に線路が作れちゃったら、チートすぎるよな。


では、絆石はどうだ?

絆石の破片を拾い集めた。

地面のコバルトブルーの輝きがなくなり、床下と車輪から魔力が漏れ始めた。

列車を少し前進させて、また絆石を列車の下に置いてみた。

ふぁぁぁ、コバルトブルーの輝きが出てきて、地面がコバルトブルーの光に代わった。魔力の漏れも止まる。


よし、やっぱりそういうことなんだな。魔力を使って移動して、停車するときに絆石を使う、これで進めるぞ。


早速、絆石を拾い上げて、中庭から城壁の上に登って絆石の上に停車した。

ここからなら、城の中のいろんな場所が見えるし、城の外も見渡せる。


まずは城の外の様子だな。さっき倒してきた以外に大きな魔物が居たらまずいし、倒しきれなかった魔物もいたし、どんな感じだろうか。


あぁ、やっぱり魔物はみんなこの城めがけて進んできているんだな。かなり城の近くまで来ているぞ。でも、大きな魔物の姿はない。先に大きな魔物を倒しておいた作戦は今のところ成功しているみたいだね。


次は城内。小隊は城の中でも一番大きな赤い建物の周り集まっているようだ。

そして、赤い建物の中からも次々と魔物が出てきている。あの建物が怪しいってことなんだろうか? 行ってみようか。飛んだ方が早いのは間違いないけど、魔法量の消費が凄すぎるのと、着陸時した後の修理対応が大変なので、遠回りになるけど、城内の通路を進むことにした。


少し進んで停車、床下に絆石。少し進んで停車、床下に絆石を繰り返す。


赤い建物の前の広場に着いた。

一旦、広場のなかでも建物から離れた場所に停車した。

魔力量が戻り切っていないのでなるべき攻撃を受けないようにしたいからだ。


建物の前の魔物の数が多すぎて、小隊は建物の入り口に近づけていないようだ。


「居たぞ! 生徒たちだ!」

やっと兵士が一人、建物の入り口にたどり着いたようだ。


やっぱりそこか!


そうなれば行くしかない。


「離れてください! ボクが入口まで行きます!」


魔物たちを跳ね飛ばしながら建物の入り口まで進んで停車した。


入り口から見えるのは、大きな鉄格子で囲まれた中に生徒達の姿だった。

その鉄格子の前には沢山の魔物たちが居る。


小隊が入口から突入し始めたが、魔物の数が多いのに対して、こちらは先陣の2小隊しか居ないから、数が圧倒的に不利な状況は変わらない。


もう、そこにタマミちゃんたちが居るのに。次の軍用列車での増援部隊を待たないといけないのか・・。


もう少しの辛抱だよ、タマミちゃん・・・

ぷわん。と警笛を鳴らした。


すると。

「17号列車さん!」

あぁっ、タマミちゃんの声だ!無事だったんだ!


ボコボコボコッ。魔力の湧きだし量が増えたようだ。

これは行くしかないってことだよな。でも、どうするか?


魔物たちは鉄格子の手前に居る、ということは、鉄格子の中のタマミちゃんたちが直ぐに危害を加えられることは無い、よし、突入だ。


「ボクが鉄格子の前まで行きます! 入口から離れてください!」


ぷあぁぁぁぁん。


ガラガラガラ・・

入口の壁を破壊しながら建物内に突入した。


ぷぎゃー!

むぎゃー!


魔物たちを跳ね飛ばしながら鉄格子へ向かって走る。


ガンガン魔物を跳ね飛ばしながら進んでいるけど、流石に魔物の数が多すぎで列車が止まりそうだ。いやいや、ここで立ち止まってたまるか、ボクが助けないでどうする! 魔力最大放出! 進め! うぬおぉぉぉ。


鉄格子前の魔物たちをまとめて跳ね飛ばして、列車を鉄格子の前に停車させた。


「お待たせ、タマミちゃん、みんな!」


「17号列車さん!」

タマミちゃんの声に続いて、生徒たちの声がする。

「え?列車、列車が迎えに来てくれたの?」

「助かったの!?」


小隊長が鉄格子の扉を壊した。


生徒たちが一斉に鉄格子から出てくる。


「さぁ、みんな、早く列車に乗って!」


タマミちゃんが走って来た。

「17号列車さん、ありがとう!来てくれたのね。警笛の音が聞こえたの。だから、もしかしたらと思って絆石を割ってみたの。気づいてくれるかと思って。」


「あぁ。おかげで魔力が目覚めて、ここまで来られたよ。とにかく、乗って。」


生徒たちは全員乗り込んだようだ。


「小隊長、どうしますか?」


「生徒たちが救出できたなら我々も一旦退却する。人質が居ないなら戦略も変わるので、部隊編成も変更になるはずだ。」


「では、生徒達と一緒に、ここを出ましょう。列車を増車しますから、全員乗ってください。」


イメージしろ、増車する、増車する・・。よし、列車が倍の長さになった。


「よし、撤収! 乗車して人員点呼!」


「第一小隊点呼完了、全員乗車、負傷者1名!」


「第二小隊点呼完了、全員乗車、負傷者3名!」


「全員乗りましたね? それでは出発します。」


頭の中の出発信号機の進行表示が大きく輝いた。


「出発、進行! 出力最大、目標、城外!」


列車はゆっくりと走り出した。だが、編成が倍に伸びてるし、線路の上ではないし、とにかく重くて、全く加速しない。


ババババババ・・

王国軍兵士の車両から威嚇射撃が始まった。魔物たちが集まり始めてるってことだ。


「17号列車さん、頑張って!」

タマミちゃんが両手と頭を車両の先頭につけて大きく叫んだ。


「任せておいてよ。行きますよー。魔力最大放出!」 うぬぉぉぉぉ!


ぷわぁぁぁん。


列車は加速を始めた。

魔物たちが続々と建物へ入ってくるが、生徒たちを乗せたまま戦うことは避けたい。

可能な限り魔物たちを避けながら走る。

偶に魔物を跳ねてしまうが、これも攻撃の意味ではなく、避けきれずに当たってしまっているだけだ。


さっき通ってきた場内の通路を、魔物を避けながら走り続ける。

よし、城壁の上まで来たぞ。

ここまでは、まだ魔物たちが来ていない。避けて走る必要が無いので、加速できる。今だ、全力で加速! もう少し! よし、飛べ、離陸!


ふわっ。


列車が浮き上がって空へ向かった。


「えー。」「きゃー。」


生徒たちの車両から大きな悲鳴とも歓声ともつかない声が聞こえる。そりゃそうだろう、列車が飛んでるんだからね、驚くよね。だいたい、飛んでるボク自身が一番驚いてるんだからさ。


全魔力を飛行に集中する。


魔物たちがは眼下に見えている。もう襲われることは無いんだ。後は無事に帰るだけなんだ。


いくら魔力を増やせるとはいっても、飛行中は増加量より消費量が多いことは既に経験済なので、このまま飛行し続けることは出来ない。とにかく線路に着陸しないと。よって、目的地はシルバーフォレスト駅だ。

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