本屋で出会った私たちは……。

夕日ゆうや

どうやら純愛らしいです。

 俺は坂本さかもと大智だいち。高校二年だ。

 俺にはお気に入りの本がある。

 その本は小説で連載されており、今日になって発売されていると知り、真っ直ぐに本屋さんに向かった。

 そして平積みになっている本から一つを選ぼうと手を伸ばす。

 と、ふと重なる手のひら。

「あ。すみません」

「い、いえ。こちらこそ」

 顔を上げてみてみると、その子は見たことのある同級生だった。

 栗色の髪に肩口で切りそろえた髪型。蒼いサファイヤのような瞳。

 可愛い。

「ええと。愛香あいかさん?」

「はい。あ。その制服、うちの学校の……」

 どうやら俺のことは覚えていなかったらしい。

「俺は坂本だ。よろしくな」

「坂本さん。下の名前は?」

「大智」

 ちょっとぶっきら棒に言う。

 俺はあまり自分の名前を気に入っていない。

「大智、大智くんか。えへへへ。よろしくね」

 荒野に咲く一輪の花のように微笑む愛香。

「じゃあ、この本買おうか」

「そうね」

 そう言って「どうやら変態に好かれたようです」を購入する俺と愛香。

「この話、好きなのよ」

「ああ。俺だって!」

「じゃあ、どこが好きか言い合わない?」

「いいよ。じゃあ、そこにあるマックスで語り合おう」

 俺は語り合える仲間がいると知るとワクワクする。

「私は、あのかえでちゃんが主人公に懐くのが好きなのよ」

「はは。分かるわ。でも、俺が好きなのは春夏はるかの脱ぎっぷりが好きだな」

 うんうんと頷きあう俺と愛香。

 そうやって語り合うと、時間を見る。

「もう時間だ」

「大変。私も今日は帰らなくちゃ」

 愛香は慌てて、片付けを始める。

「じゃあ、最新刊の感想は明日、教室で」

「え。話してもいいのか?」

 俺は目を丸くする。

「もちのろん! 私、話し合える友達が欲しかったのよ」

「俺もだ。語り合おうぜ!」

「うん!」


 その夜。

 俺はベッドの中で手足をジタバタとさせる。

 うおおおお。

 まさか、あの学校のアイドル・愛香と、一緒に語り合える日がくるとは。

 俺、愛香のこと好きかも。

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