今日もあの子は本屋のアルバイトでエッチなタイトルを読み上げさせられている~えっ、その官能小説の作者は俺ですが、何かしちゃいました?~
華川とうふ
図書委員長 萌々香、放課後の秘密
「もう、聞いてよっ。嫌になっちゃう」
図書委員会副委員長の相原萌々香はちょっと怒りながらも、手元の本は丁寧に扱いながら棚に戻していく。
相原萌々香は可愛い。
恐らくこの学校で一番。
一度も染めたことのない烏の濡れ羽色の髪、化粧をしていないのにかすかに上気した肌は桃色。きっと、この調子だと下着まで校則に従い純白のものを身に着けているだろう。
それがどんなに男子生徒の劣情をあおるとも知らずに。
ちなみに、そんな萌々香には二つの秘密がある。
一つは、真面目そうな委員長キャラにぴったりなメガネは伊達メガネだということ。
そして、もう一つはアルバイトをしていることだ。
もちろん、真面目な彼女は校則を破るような真似をしていない。
萌々香の将来は本屋になることだ。
彼女はその夢のために勉強として親戚の営む本屋で放課後アルバイトをしている。
もちろん、無給ではあるが。
そんな萌々香の悩みというか愚痴を聞くのが、図書委員会委員長という萌々香の隣にいられる俺の特権だった。
「どうしたの? また、立ち読み常連客のこと」
「ううん、違うの。今度のお客さんは買い物はしてくれるの、たくさん」
「それはイマドキ珍しいいい客じゃないか」
俺は萌々香の話を聞いて不思議に思う。
出版不況と言われる現代で本をたくさん買ってくれる客なんて、神様といってもいいくらいの客だと思うのに。
そんな客に萌々香が悩むなんて。
だけど、萌々香はもじもじとしている。
「買うものが変なの」
「変って一体? 本だろ?」
「!?」
俺は急に萌々香が口にした言葉に驚く。
萌々香は顔を真っ赤にしていた。
「ねっ、恥ずかしいよ。予約の確認のために読み上げなきゃいけないのにこんなタイトルばかり……」
萌々香は怒りと同時に悲しそうな顔をした。
ごめん。萌々香。本当にごめん。
俺は萌々香に言っていない秘密に後悔する。
そのエロタイトルの本の作者が俺だということを。
今日もあの子は本屋のアルバイトでエッチなタイトルを読み上げさせられている~えっ、その官能小説の作者は俺ですが、何かしちゃいました?~ 華川とうふ @hayakawa5
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