動物村の本屋さん

仲仁へび(旧:離久)

動物村の本屋さん




 動物の親子が、道を歩いていく。


 その先にあるのは一つの立派な建物。


 本の目印を掲げた建物だ。


「今日も本屋さんに行こうと思うんだ。いいだろう?」

「ええ、一緒に行きましょう」

「ぼくも、ぼくも!」






 世界のどこかにある動物の世界。


 その世界には、色んな動物が仲良く暮らしている村がたくさんあった。


 そんな村の中には、必ず本屋がある。


 なぜなら動物たちは、「知識は力」だと知っているからだ。


 その世界には普通の動物もいたが、数百年前に絶滅しかけた動物たちも、たくさんいた。


 みな、この世界に逃げ込むのがあとちょっと遅かったら、どこにも存在しない種族になっていた者達だった。


 そんな彼等は隠れ潜むばかりではなく、現状に立ち向かおうとしていた。


 彼等は、長い間考え続けた末に、結論を得た。


 知識があれば、絶滅しかけることもなかっただろう、と。


 強い動物のすみかに移動してしまう事や、人間の罠につかまって食料や道具にされることもなかっただろう、と。


 だから絶滅しそうな動物たちは、同じ過ちを繰り返さないように、村の中には必ず本屋を建てたのだ。


 その考えは普通の動物達にも広まり、読書が習慣になっていった。


「ふむふむ、なるほど」

「ふーむ、新しい発見だ」

「この考え方はなかったな」


 本屋を利用するようになった動物達は、どんどんかしこくなっていった。


 便利な道具や法律を作ったりして、村々を発展させていく。


 しかしやがて、それらが大きな国になったころ、一つの事件が起きた。


 絶滅危惧種の動物を狙う者たちが、その世界に乗り込んできたのだ。


 動物たちは、過去と同じ間違いはすまい、と対策を考え始める。


 しかし、とてもすごい力を持った道具が一つ。


 火を吹いただけで、動物たちはあっけなくやられて、捕まってしまった。


 長い時間をかけてかしこくなった代わりに、危機感に対する本能や、足の速さや力の強さが退化してしまったためだった。


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