第55話 閉廷
「あっ」
刀を振り下ろす良庵の動作に五平の喉から声が漏れる。
お涼の後ろ手を縛る縄がはらりと落ちた。
「今の一振りで戸隠のくノ一お涼は処分され申した。三人ともしかと立ち会ったな?」
「見届けましてございます」
「この耳で確かに、最期の声まで聞き届けやしたぜェ」
「紛う事なく、お涼殿の匂いは潰えてございます」
阿ノ国の名君、忠親は大きく頷いた。
「真田三勇士の証言、各国に即知らしめよ」
小うるさい老中が畏まって席をたつと、忠親はお涼を見下ろし下知を下した。
「聞いての通り、戸隠のお涼は誅された。今後一切戸隠の里との連絡は、とること
忠親に話を振られた良庵はあごひげをさすって思案した。
「一先ず名を『八重』と替えましょう。
五平は城勤めを解き長屋を離れ、二人共に私の監視下で暮らしていくが良いでしょう」
続けて猿の縄を解きながら良庵は言った。
「こちらの
若いくノ一らに手を焼いていた藤二は、それを聞いて大きく頷いた。
「ふむ、ならばそのように手はずを整えよ。これにて一件落着!」
自ら閉廷を宣言する忠親に、五平もお八重も地べたに額を擦り付けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます